LIXILは、世界中の誰もが描く住まいの夢を実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しています。
2024年3月期実績
世界では、安全に管理された衛生設備(トイレ)を使用できない人は2022年時点で約35億人に上り、そのうち約4.1億人は日常的に屋外で排泄をしています※1。不衛生な環境は命を脅かし、1日当たり約1,000人を超える5歳未満の子どもが、不衛生な水と劣悪な衛生環境による疾患※2で亡くなっています※3。また、世界人口の4人に1人にあたる約20億人が、家庭で基本的な手洗い設備を利用できていません※1。手洗い設備の不足は、感染症の拡大を引き起こす危険性があります。
安全で衛生的なトイレや手洗い設備の不足は、すべての国や地域に悪影響を及ぼし、成長と発展の可能性を妨げています。またトイレの不足は、人びと、特に女性や女児に対して危険をもたらします。人目につかない場所まで用を足しにいく途中で、性的暴行を受けたり、動物に襲われたりするケースがあるほか、初潮を迎えた女子生徒が通学をあきらめざるを得ない原因にもなり、男女の教育格差にもつながっています。すべての人が清潔な水とトイレを利用し、衛生習慣を実践できるようになると、今後20年間で開発途上国の経済が数兆ドル規模で改善されます※4。世界保健機関(WHO)と国際連合児童基金(ユニセフ)が2023年に発表した共同報告書※1 では、このような衛生課題に対して2030年までに持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット6.2「すべての人びとの、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす」を達成するには、進捗のペースを現在の4倍に加速すべきとしています。この目標の達成に向けて、LIXILは低価格で誰もが使用できる製品を開発・提供するとともに、政府、NGOなど、様々なセクターと継続的に連携し、取り組みを推進しています。
※1 「家庭の水と衛生の前進2000-2022」(WHO・ユニセフ共同監査プログラム[JMP])(英語・別画面が開きます) >
※2 安全でない飲料水や劣悪な衛生環境によって蔓延する病気には、下痢性疾患、コレラ、赤痢、赤痢菌症、腸チフス、マラリア、肺炎、肝炎、急性呼吸器感染症(ARI)、タンパク-エネルギー低栄養(PEU)、土壌伝染性蠕虫(STHs)などがある
LIXILは、Purpose(存在意義)である「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」を目指す上で、「グローバルな衛生課題」を緊急性の高い世界的な社会課題として認識し、3つの優先取り組み分野の一つに定めるとともに、重要課題の中でも優先すべき領域として位置付けています。革新的で低価格なトイレや手洗いソリューションを提供することにより、2025年までに1億人の衛生環境の改善を通じて生活の質の向上に貢献することを目指しています。
SATO事業は、LIXIL Public Partners(LPP)の取り組みと併せて、この野心的な目標を達成する上で重要な原動力となっています。2013年に一つの製品から始まった同事業は、現在では様々な低価格で耐久性に優れた革新的なトイレや衛生製品・備品を提供し、農村部や都市周辺部の消費者のニーズに対応するとともに、衛生用品業界のサプライチェーンや販売網の構築に取り組んでいます。また、エンドユーザーのニーズに対応するだけでなく、消費者の行動変容につながるような製品開発に取り組むことで、社会にインパクト(良い影響)をもたらしています。
LIXILは、SATOの革新的な製品・サービスの開発・提供を通じて、世界中の人びとの生活の質の向上と明るい未来に貢献しています。低価格なSATOの衛生製品を使用したユーザーが将来的に付加価値の高いLIXIL製品に移行することは、人びとの生活の質を段階的に向上させることにつながります。このように、人びとの状況やニーズに応じた最適なソリューションを提供することで、当社は幅広い製品・サービス群への需要を創出しています。
SATOの革新的な衛生ソリューションは、45ヵ国に広く導入され、高い評価を獲得しています。製品の提供にとどまらない取り組みを通じて、さらなるインパクト拡大を目指しています。具体的には、SATOブランド製品を設置する現地の職人を育成するほか、職人や起業家がMake(作る)、Sell(売る)、Use(使う)というサイクルを構築することで事業機会と地域経済を拡大する方法を学ぶ機会をパートナーと協働で提供し、衛生市場の確立と経済効果の拡大に貢献しています。また、特に深刻な衛生課題を抱える農村や都市部周辺の住民に対して、多様な啓発活動を行い、衛生環境が家庭やコミュニティにもたらす影響に関する理解を促進しています。LIXILは、これらの取り組みを様々なステークホルダーと連携しながら進めることで、コミュニティにより大きなインパクトをもたらしています。ユニセフとのグローバルパートナーシップの継続、FINISH Mondialとの連携による衛生環境の改善に向けた金融サービスの提供のほか、多くのNGO、現地メーカーや販売店との連携を通じて、総合的なソリューションを提供するためのパートナーシップのプラットフォームやビジネスモデルの構築を進めています。LIXILは、こうした協働こそが、衛生課題やそれに起因する社会課題に取り組む上で、民間企業が果たす役割を強化し、それらがもたらす価値を高めると考えています。
グローバルな衛生課題の解決に向けた戦略および取り組みは、年4回開催されるグローバル衛生審議会※のもと、統括されています。インパクト戦略に基づく様々な施策検討や進捗状況の確認を行っています。優先取り組み分野であるグローバルな衛生課題の解決に向けたこれらの取り組みの進捗については、インパクト戦略委員会を通じて四半期ごとに執行役会に報告されています。取締役会は、それらに対する進捗状況について半期ごとに報告を受け、議論・監督を行っています。
また、各地域の渉外担当リーダーなどを集めたガバメント・リレーションズ会議を四半期に1度開催し、戦略・施策が時宜にかない有効であるよう、政策の動向や社会課題、各地域における活動状況について議論や意見交換を行っています。
※ 2025年3月期より「SATOアドバイザリーボード」から「グローバル衛生審議会」に変更となりました
LIXILは、革新的で低価格なトイレと手洗いソリューションの提供により、2025年までに1億人の衛生環境を改善し、生活の質を向上させるという野心的な目標を掲げています。2024年3月期現在、自社製品により約6,800万人がより良い衛生環境にアクセスすることができるようになりました。しかし、1億人という目標は通過点に過ぎません。当社は今後も取り組みを加速し、SDGsのターゲット6.2「2030年までに、すべての人びとの、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成」に貢献していきます。
目標年 | 指標と目標 | 2024年3月期実績 |
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2025年まで | 1億人の衛生環境の改善を通じて生活の質の向上に貢献 | 約6,800万人※ |
※ LIXILのグローバルな衛生課題の解決におけるインパクト算定・報告ガイドライン(2024年6月25日)(別画面が開きます)PDF:1044KB >