LIXILは、世界中の誰もが描く住まいの夢を実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しています。
LIXILは、インパクト戦略の3つの優先取り組み分野に「多様性の尊重」を定めています。その重要な取り組みの一つとして、誰もが利用しやすいユニバーサルデザイン(UD)を組み込んだ水まわり製品・住宅建材やサービスの開発および提供を行うなど、事業を通じて「インクルーシブな社会の実現」に貢献しています。また、エンドユーザーのニーズに応えるだけでなく、UDやパブリックトイレに関する情報発信や、障がいのある方への理解を促進する啓発活動、大学との共同研究などに積極的に取り組むことで、社会により良い変化をもたらしています。
多様性の尊重 >
LIXILユニバーサルデザイン方針(別画面が開きます)>



お湯に優しく包まれて温まる新感覚のシャワー「ボディハグシャワー」は、全身でちょうど良い浴び心地と温まりを追求した製品であり、5分間浴びるだけで従来のシャワー浴よりも身体全体を温めることができます。
家族のあり方、働き方、住まい方が多様化した昨今、お風呂の入り方も人それぞれで、季節を問わずシャワーだけで済ませる方も増えています。当社が実施した調査では、浴槽入浴よりもシャワー入浴を優先する方々は、その手軽さや時短などの点を重視している一方、温まりも求めていることがわかりました。
ボディハグシャワーの開発にあたっては、シャワーの手軽さに加え、身体を温めたいニーズにも応える製品とするため、様々な年代・性別の従業員や車椅子ユーザーの従業員へのヒアリングを重ねました。10個あるノズルの配置や水の出方・量、アームの可動域などを工夫することで、多様な人びとの快適さを追求しています。
浴槽をまたぐことが難しい被介助者の快適な入浴や介助者の負荷軽減を実現する製品でもあり、現在多数の福祉施設・病院に導入されています。
玄関ドア用の電動オープナーシステム「DOAC」は、玄関ドアに触れることなく、リモコンで鍵の施錠・解錠やドアの開閉を操作できる製品であり、身体に障がいのある方や高齢者などの自立的な行動範囲の拡大に寄与しています。
スマートフォンやApple Watch※などでのタップ操作、音声操作にも対応しており、世界で初めて玄関ドアのハンズフリー操作を実現しました。
※Apple Watchは米国および他の国々で登録されたApple Inc.の商標です
世界で初めて玄関ドアのハンズフリー操作を実現
LIXILが企画開発した泡シャワー「KINUAMI」は、キメ細かく温かい泡で身体中を包み込み、なで洗いするだけで身体を洗えるため、大人から子どもまで幅広い世代の入浴時間を豊かで快適なものにしています。「KINUAMI」では、医療・介護施設の声を反映し、仕様を特化した専用モデル「KINUAMI Care」も手がけており、医療・介護現場の生産性向上に貢献します。
「KINUAMI Care」は、介助者の業務負担軽減を追求し、1度の専用ボディソープの補充で多くの入浴介助に対応できるようソープタンクを大容量化しました。また、タンク形状や視認性の高いインジケーターへの変更により入浴介助を円滑にします。さらに、多様な介助シーンに対応する延長シャワーホースも備え、スムーズな取り回しを可能にしています。これらの改良により、医療・介護施設での介助者・被介助者双方にとって入浴介助がより良い体験となることを実現します。
入浴介助をサポートする泡シャワー「KINUAMI Care」
共生社会の実現において最も大きな障壁の一つである外出時のトイレに関する課題を解決するため、LIXILは「誰もが安心して快適に利用できるパブリックトイレ」の実現を目指しています。パブリックトイレは社会を映す鏡であり、時代とともに変化し続けてきました。同時に、人間の尊厳という普遍的な要素を包含する場所でもあります。LIXILでは、パブリックトイレを外出先の重要なインフラの一つとして捉え、誰もが安心して快適に利用できるトイレ環境について、研究を続けています。
これまでの取り組み事例
誰もが安心して使えるトイレを目指して──。オルタナティブ・トイレ※から見えてくる、多様性ある社会の形(別画面が開きます) >
「認知症になってもやさしいスーパープロジェクト」マイヤ仙北店(岩手県)における、認知症の方に配慮した男女共用トイレの実現(別画面が開きます) >
※オルタナティブ・トイレ:多様なニーズやオールジェンダー利用を想定し、「自分に合った個室をお選びください」をコンセプトとした新しいトイレの提案の形
LIXILは、パブリックトイレをクラウド上で自動設計するサービス「A-SPEC」を無料で提供しています。ウェブサイトにアクセスし、トイレ空間(間口や奥行きなど)や設備器具(便器の種類や手すりなど)に関する情報を入力すると、プログラムが様々なシミュレーションを行い、より良いプランを複数提示します。
ユーザーは、3Dモデルを見ながら器具の適正位置や必要な動作空間など使い勝手を比較し最適なプランを選べるほか、各種データを無料でダウンロードできます。
パブリックトイレ自動設計サービス「A-SPEC」の操作画面
パブリックトイレを計画する際に設計者を悩ます多くの問題を利用者の目線で考え、LIXILのノウハウや提案経験を活かした使い勝手の良いトイレ空間の設計をサポートすることで、安全で使いやすいトイレの普及に貢献することを目指しています。
A-SPECは、Society5.0の総合展示会「CEATEC2023」において、イノベーション性が高く優れていると評価された作品に授与される「CEATEC AWARD 2023」の「コ・クリエイション(共創)部門」準グランプリを受賞しました。昨今ではパブリックトイレのニーズが多様化している一方、設計業務においては手作業での工程が多く、人手不足による業務の属人化やノウハウのブラックボックス化などの課題が懸念されています。同賞では、A-SPECのデジタル技術を活かしてこうした課題解決に寄与できる点が評価されました。
A-SPEC(別画面が開きます)>
「A-SPEC」 CEATEC AWARD コ・クリエイション部門 準グランプリを受賞 >
LIXILでは、UDのコンセプトや製品について、お客さまやビジネスパートナーに適切な情報を提供するため、「UDウェブサイト」を公開しています。加えて、パブリックトイレに関する情報サイト「LIXILパブリックトイレラボ」を公開するなど、デジタルコミュニケーションを強化しています。
UDウェブサイトでは、直感的にわかりやすい操作性など、障がいのある方や高齢者など様々な人が利用しやすいよう工夫しています。パブリックトイレの情報に特化したLIXILパブリックトイレラボでは、トイレへのアクセスを人権やSDGsの観点から捉えています。パブリックトイレに関するLIXILの考え方や提案を具体的に伝え、利用者とともに考えていくためのツールとしてサイトを活用しています。
UDウェブサイト
より見やすくわかりやすいサイトを目指し、継続的に掲載内容やデザインの見直しを行っています。2024年3月の改訂では、旧本社に設置していたオルタナティブ・トイレが本社移転により見学できなくなったことに伴い、3Dバーチャルで施工事例を体感できるコンテンツを追加しました。また2025年7月の改訂では、LIXILが社外の方々と取り組んだ研究を紹介するページ「LIXILの研究」を新たに追加しました。
UDウェブサイト(別画面が開きます)>
LIXILパブリックトイレラボ(別画面が開きます)>

オルタナティブ・トイレのバーチャル施工事例・施工写真のバナー
株式会社LIXILは、国内におけるテレビCM(BS放送を除くすべて※1)を字幕付きで放送しています。
リモコンの字幕ボタンを押すとCM中に流れる音声の字幕が表示される字幕付きテレビCMは、聴覚に障がいのある方へ情報を伝える有効な手段の一つとされています。しかし、テレビ番組は9割以上の番組で字幕表示可能な一方で、テレビCMは字幕対応をしている企業が少なく、その普及率は推計1.02%(2021年6月時点、字幕付きCM普及推進協議会)という状況です。
LIXILは、インクルーシブな社会を実現を目指し、他社に先駆けて字幕対応に向けた取り組みを進めてきました。当初は、放映するテレビ局側の受け入れ体制や当社のクローズドキャプション※2の制作体制が整っておらず実現は容易ではありませんでしたが、聴覚障がいのある従業員から直接意見を聞くことで効果を確信し、実現に向けて進むことができました。その結果、2023年3月期上半期には、自社の字幕付きCMが聴覚に障がいのある方13.5万人、さらに耳が聞こえにくくなった高齢者を含めると260万人にリーチしたことがわかりました※3。
さらに、聴覚障がいのある従業員の中には、字幕付きCMを見てLIXILへの入社を決めた人もいるなど、こうした取り組みが組織のD&I推進にもつながっています。
また、2022年12月以降、国内で展開するオンラインショールームでは、AI音声認識を活用した文字起こしアプリ「AmiVoice ScribeAssist」による接客サービスを提供しています。コーディネーターの話した内容が文字で表示されるため、聴覚障がいのある方や加齢性難聴の方に、さらには多言語話者の方への日本語理解の補助として、より快適にオンライン接客を受けていただけます。
こうした取り組みの展開にあたっては、聴覚障がいを持つ従業員がモニターになるなど、サービスの構築に積極的に参加しました。LIXILでは、このように様々な個性を持つ従業員の英知や視点を活かすことで、多様なニーズに対応する製品やサービスを生み出しています。
※1 2024年7月時点
※2 視聴者がリモコンやボタン操作によって表示・非表示を切り替えできる字幕
※3 2022年4~9月の自社テレビCM放送実績より推計
国内では、従業員がUDに関する知識を深め、お客さまに寄り添った応対・提案ができるよう営業部門を対象とした教育を実施しています。2025年3月期は、主に高齢者や車椅子ユーザー向けの安心・安全な住まいづくりに関する提案力の向上を目指した研修などを行いました。その一つとして、ショールームで接客を行うコーディネーターなどに対し、住宅のトイレや浴室、キッチンなどの空間設計において配慮すべき点や提案製品、展示製品を活用したUDの紹介および提案方法について学ぶ対面型研修を全24回実施し、約300人が受講しました。
また、住宅や高齢者施設向けの提案力向上を目指して、身体状況・特性別水まわり動作の動画(トイレ編:10種類、浴室編:12種類)を制作し、従業員の教育に活用しています。
その他、UDに関する幅広い情報やコンテンツを配信する社内向けのイントラネットを設け、営業部門への情報提供や教育に活用しています。
LIXILは多様な人びとがお互いを尊重しながらいきいきと暮らすことができる「インクルーシブな社会」の実現に向け、様々な教育活動を行っています。
日本全国の小学校で開催している「ユニバーサル・ラン」は、パラアスリートとの交流やパラスポーツの体験、講義などを通じて、子どもたちの多様性への理解を育む取り組みです。2025年3月期は義足アスリートによる陸上教室のほか、車椅子バスケットボールやパラバドミントン(車椅子)体験授業を開催し、参加した児童らは競技用車椅子に乗ってパラスポーツを体験するほか、座学などを交えながら多様性について学びました。
運営は学校や行政、各地域の従業員と連携して行っており、これまでに758回開催し、21,889人の児童が参加しています。
ユニバーサル・ランの活動の様子
山下千絵 選手 ( 陸上競技短距離 ・ SMBC日興証券株式会社所属)
LIXILショールーム東京では、杏林大学保健学部リハビリテーション学科の学生を対象にUDに関する授業を継続的に実施しています。2025年3月期は3年生を対象に行い、学生と教員を合わせて60人が受講しました。
授業では「住環境整備学」として、LIXILのUDのコンセプトや方針、水まわり製品を中心として設計や製品化における重要な点などを説明するとともに、展示されている実際の製品を紹介しながらUD視点での解説を行いました。参加する学生の多くは作業療法士として保健・医療・福祉施設に就職するため、就職先でのリハビリテーション業務(日常生活動作の獲得や回復)や地域生活支援業務の一環で行う住宅改修に対する水まわり計画においてLIXILのUDのノウハウが活用されることが期待されます。
杏林大学学生への授業の様子