LIXILは、世界中の誰もが描く住まいの夢を実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しています。
2023年3月期実績
LIXILは、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」というPurpose(存在意義)の実現に向けて、多様なニーズに合った革新的な製品やサービスの提供に取り組む上で、多様性こそが競争力や独自性を高め、イノベーションや持続可能な成長の原動力になると考えています。また、すべての従業員が働きやすい職場環境や風土を整えることで、誰もが起業家精神を持って高いハードルに挑戦し、その成果が正当に評価される組織を目指しています。
当社は、2018年3月期にダイバーシティ&インクルージョン(D&I)宣言を発表し、D&Iにおける重点領域を定めて取り組みを進め、2021年4月にはD&I戦略を更新しました。D&I戦略では、2030年3月期までにLIXIL全体にインクルージョンの文化を定着させ、ジェンダー不均衡を是正することを目標に掲げています。
2022年3月期には具体的なアクションプランを策定し、人材育成や人材獲得、インクルーシブな文化の醸成において取り組みを進めました。2023年3月期は、前期に引き続き有望な女性人材の発掘・育成に取り組んだほか、各部門主導でD&Iの推進を可能にする仕組みづくりに向けて全従業員に対するD&Iの重要性の理解、インクルーシブな組織づくりにおけるリーダーの役割や責任の理解を促進する活動を実施しました。
また、より幅広いD&I強化のための取り組みの一つとして、障がいのある従業員が活躍しやすい職場づくりにも注力しています。
2020年3月期にD&Iをグローバルに推進する部署を設置し、全社共通の施策の展開に取り組んできました。また、2021年3月期には、CEOを議長とし執行役と部門長で構成されるD&I委員会を設立し、D&I戦略や推進施策を更新しました。D&I委員会では、D&I戦略に基づく様々な施策検討を行い、協議・決議された内容は「インパクト戦略委員会(旧コーポレート・レスポンシビリティ委員会)」を通じて四半期ごとに執行役会に報告されます。執行役会は目標や実行計画について協議・承認し、取締役会はそれらに対する進捗状況を半期ごとに報告を受け、議論・監督を行っています。こうした体制のもと、LIXIL全体でD&Iの取り組みを加速させています。
D&I戦略で目標として掲げるインクルージョンの文化の定着を目指して、従業員意識調査「LIXIL Voice」のKPIの一つにインクルージョンを設定しており、調査結果に基づいた施策を展開しています。
2022年3月期にはグローバル規模の従業員リソースグループ(ERGs:Employee Resource Groups)を立ち上げたほか、「アンコンシャス・バイアス」や「心理的安全性」などD&Iの理解促進に向けたワークショップやeラーニングをグローバル規模で実施しました。
2023年3月期は、インクルージョンスコアや女性管理職比率などのKPIを可視化したダッシュボードをリーダー向けに導入し、各部門がD&I推進の効果を自ら把握することができる仕組みを整えたほか、リーダー向けD&I推進ガイドブックを発行し、より実践的な事例を共有しています。効果的なD&I推進を目的とする同ガイドブックは、多数の社内リーダーへのインタビューと、外部のインクルーシブリーダーシップモデルおよびリサーチに基づいてつくられています。ガイドブックの活用に向けたワークショップを順次実施しており、グローバル全体の全リーダー・マネージャーにあたる約5,000人が参加予定です。その他、定期的に動画や記事などを配信し、ベストプラクティスの共有を促進しています。
リーダー向けD&I推進ガイドブック
LIXILでは、2023年の国際女性デーのテーマ「#EmbraceEquity(公正さを胸に)」に合わせて、「女性のリーダーシップ」「女性のためのデザインやものづくりのあり方」「男性のアライ(支援者)」に関するパネルディスカッションを開催し、世界各地のリーダーが登壇しました。また、ジェンダー平等をテーマとして活動するBetter Together ERGのイベントを実施したほか、関連する写真やメッセージを社内SNSで共有するなど、従業員がD&Iやジェンダー平等への支援を主体的に表明しました。
パネルディスカッションの様子
LIXILでは、CEOのコミットメントのもと、女性活躍の推進に取り組んでいます。
従業員の誰もが能力を最大限に発揮でき、LIXILがその成長を後押しできるように、さらなるD&Iの推進と実力主義の徹底を目指して、国内では職務等級制度を採用した新人事制度への転換を図っています。管理職については、2022年4月より新人事制度へ移行しました。職務・職責を基本とした等級制度に見直し、給与短期インセンティブに個人の貢献および会社の業績を従来以上に反映させる仕組みを導入しています。また、これまで女性従業員の割合が多かった勤務地限定社員制度(地域別賃金)を2022年4月に廃止しました。これにより、将来的な転勤の可能性による地域別賃金差を軽減し、個々人の職務・職責による実力主義の報酬体系を目指しています。一般従業員については、属人的な要素を排し、職務内容や業績貢献に応じた報酬を実現するための諸手当の制度変更を2023年4月に実施しました。加えて、2024年4月には職能資格制度から職務等級制度への移行および勤務地限定社員制度の廃止を行い、性別や年齢にとらわれない、実力主義の人事制度への転換を図る予定です。
また、2022年3月期には、ジェンダー不均衡の是正に向けた取り組みの一つとして、主要ポジションの後継者育成計画の作成に向けたPeople & Organizational Development(POD:人材組織レビュー)プロセスにD&Iの観点を組み込み、全社で有望な女性人材を発掘しました。2023年3月末時点で後継者候補として選抜された従業員に占める女性の割合は27%でした。
その他、日本国内で展開する選抜型の次世代人材育成プログラム「NEXT」においても、有望な女性従業員の育成に取り組んでいます。
2023年3月期は、国内の女性新任管理職を対象とした研修を初めて実施し、女性管理職21人が参加しました。同研修は、女性管理職が自己の強みを認識し、自分らしいリーダーシップ像を描けるようになることや女性同士のネットワーク構築を目的としています。さらに、研修に参加した女性管理職の上司を対象に、女性リーダーの成長を支援する行動を学ぶオンライン研修も実施しました。今後はニーズに合わせて対象範囲の拡大を視野に入れながら、年1回以上の開催を予定しています。
女性新任管理職を対象とした研修の様子
こうした取り組みの結果、LIXIL国内の女性管理職者は2012年3月時点の0.9%に対し、2023年3月時点で7.1%まで増加しました。
グローバル全体においても、各事業部門・部署の女性管理職比率および職務レベル・人種別などの女性比率の目標と施策を設定し、取り組みを進めています。
2023年3月期は、EMENA地域において、パートタイムで働く女性従業員を対象に通常一人が担当する管理職の職務をペアで担当する「Tandem leadership」プログラムを試験的に導入しました。雇用形態に関わらず、能力・意欲のある従業員が自身の希望に基づくキャリア形成にチャレンジできる仕組みを整えています。
グローバル全体の女性管理職比率は、2023年3月時点で17.5%となっており、2030年の目標30%達成に向けた取り組みを今後も実施していきます。
2016年4月「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」の施行に伴い、LIXIL国内では女性活躍を加速し定着させるために、働き方を含む環境の整備を促進する「一般事業主行動計画」を策定し取り組んできました。2017年には、厚生労働大臣より女性の活躍推進が認められた企業に与えられる「えるぼし」の最高位認定を取得しています。
女性従業員のさらなる活躍を目指して、パフォーマンスを十分に発揮できるよう、「一般事業主行動計画」を2023年4月に更新しました。
LIXILでは、研究開発や生産、営業事務、企画管理などの幅広い職場で、一人ひとりの特性にマッチした業務を提供することで、障がいのある従業員がやりがいを持って活躍できる環境を整備しています。2022年6月1日時点でのLIXIL国内の障がい者雇用数は454.5人、障がい者雇用率は2.48%※となっています。
LIXILは、2014年に障がい者就労センター「LIXIL NIJI」を開所しました。様々な障がいがある従業員の就労上の支援、業務適性評価、職務能力開発を行うとともに、障がい者と健常者がともに働ける環境や条件を探るための様々な試みを実施しています。バリアフリーを基本とし、視覚に障がいがある従業員向けに文字を大きくするソフトの導入や、車椅子用に高さが調整できる机の設置など、働きやすい環境を整備しています。
また、LIXIL国内全体としても取り組みを強化しています。例えば、聴覚障がいのある従業員への配慮として、研修に手話通訳を導入する、動画に字幕を入れるなどの試みを行っています。一人ひとりの特性を踏まえた業務上の工夫や配慮、職場環境の改善を行い、不安を感じやすい人には、業務を見える化しコミュニケーションをとる仕組みにする、他人の気配が気になる人には自席の前を空席にし、フリースペースで業務を行うようにするなどの工夫も実施しています。また、障がいのある従業員が自ら社内SNSで障がいに関する様々な情報を発信したり、手話教室を開催したりするなど、障がいの有無に関わらず全員がともに活躍できる職場となり、インクルージョンの文化が定着するよう活動しています。
これらの取り組みを他社や行政機関と共有することで、障がいのある方が活躍できる社会づくりに貢献することを目指しています。
手話教室開催の様子
※「厚生労働省 障害者雇用率制度」算出方法に基づく障がい者雇用数
LIXILでは、2017年4月より性的マイノリティの従業員が働きやすい職場づくりを進めています。
LIXIL国内では、2019年3月に人事制度の適用拡大や就労環境の整備を行いました。同性パートナーを配偶者とみなす慶弔休暇や慶弔金の提供、健康診断における配慮、希望する性の制服着用などの対応を行っています。
また、社内での理解・支援を広めるための活動として、2018年3月期から、性の多様性に関するオンライン講義などを開催し、受講を推奨しています。さらに、勉強会やワークショップなどを通じて性的マイノリティの理解者・支援者であるAlly(アライ)を募り、賛同した従業員にはAllyであることを示すバッジやシールを配布しています。
こうした取り組みが評価され、LIXILは企業・団体のLGBTQ+への取り組みを審査する「PRIDE指標」の最高位「ゴールド」を6年連続で受賞しています。
LIXIL国内では、従業員一人ひとりが能力を十分に発揮しながら、活き活きと働き続けられる職場環境の整備をトップ主導のもと進めています。
従業員が多様なライフステージの中で高いパフォーマンスを発揮し続けられるよう、仕事と家庭の両立を支援する制度と風土づくりに取り組んでおり、柔軟な働き方や出産・育児をサポートする制度などの拡充を進めています。2023年3月期は、時短制度の延長や男性育休の促進に向けた取り組みなどを実施しました。
在宅やサテライトオフィス勤務をサポートするテレワーク制度の拡充に加え、2021年3月期にはコアタイムを撤廃した「スーパーフレックス制度」を導入し、働く時間や場所など柔軟に対応できる仕組みを促進しています。
2023年3月期は、男性従業員の育休取得促進に向けて、毎月19日を育休理解促進日として情報発信を行い、男性育休に対する認識や理解の促進に努めました。当社では、2025年までに男性従業員の育児休業取得率100%を目指します※。
未就学児を養育する従業員向けの「子の看護休暇」や、家族の介護のための「介護休暇」については、2021年3月期に新たに10日ずつ有給休暇で設定したほか、2021年3月期に生理休暇から改定した「セルフケア休暇」においては、取得事由をこれまでの不妊治療、妊娠時・生理時の体調不良に加え、更年期症状・更年期障害改善のための通院を追加するなど、休暇制度の拡充を進めています。
また、出産・育児・介護・配偶者転勤による転居などを理由とした退職者の再雇用(キャリアリターン制度)も行っています。
※直接雇用の従業員のみを対象。当社独自の育児目的休暇である「配偶者出産・育児休暇(ぱぱの子育て休暇)」を含みます。
育休通信に掲載しているコンテンツの一例
2023年3月期は、育児のための時短勤務の利用期間を子どもが小学校6年生になるまで延長しました。また、配偶者の出産に伴う男性従業員向けの「配偶者出産・育児休暇(ぱぱの子育て休暇)」の取得可能期間を半年から1年に、取得可能日数も5日から10日へと拡大しています。その他、産休・育休からの早期復職者への金銭的サポート制度や延長保育料や認可外保育施設の利用料補助制度も提供しています。
LIXILは、D&I戦略のもと、あらゆる多様性を踏まえた人材育成や人材獲得、インクルーシブな職場環境の整備を進めています。
その一環として、日本国内では、2022年3月期から新卒採用を男女同率とすることを目標に掲げ取り組んでいます。
会社の次世代を担う人材育成・登用に向けては、主要250ポジションに対する後継者リストなどにおいて、性別や国籍、人種、キャリアなどの多様性を確保できるよう取り組んでいます。
また、2030年までに社内の人種別比率を米国国内の人種別比率と同等にすることを目標に掲げています。
LIXIL国内では、工場で外国人実習生の受入を行っています。実習生が日本で活き活きと働くために、より良いコミュニケーションを築くことが大切であると考え、日本語の勉強会や日本文化を理解するためのイベントなどを開催しています。
また、グローバル全体では、ERGsの一つとして、多文化にフォーカスしたグループが立ち上がり、多様な人種に対する理解を促進する取り組みを実施しています。
LIXILでは、従業員主体の取り組みを後押しする仕組みを整えています。これまで日本やAmericas地域などでは困りごとの共有や解決、スキルアップなどを目指す当事者同士の従業員ネットワークによる活動を展開してきました。例えば、育児と仕事の両立をテーマに活動している「育わーく」では、毎月オンラインランチ会を開催、悩みや課題を共有し、解決のための行動につなげています。聴覚に障がいのある従業員を中心に活動している「ミミシル」では、健聴者向けに手話教室などを行っています。
2022年3月期には、これらの活動を組織の変化につなげていくため、ジェンダー平等、多文化、障がい、働く親や介護者、LGBTQ+にフォーカスした5つのERGsをグローバル規模で立ち上げました。各グループにはエグゼクティブ・スポンサーとして執行役が就任し、活動を支援しています。
従業員リソースグループ(ERGs:Employee Resource Groups)を設立
2023年3月期は、「女性リーダーのキャリア」に関するパネルディスカッションや、障がいのある従業員や育休を取得した男性従業員が体験談を語るイベントを開催し、動画配信も行いました。
男性育休に関するパネルディスカッション開催の案内
また、知多工場では、「ミミシル」が中心となり、聴覚障がいのある従業員の働きやすさ向上に向けて、話している人の言葉をリアルタイムで字幕にするシステムを使った実証実験を行いました。同システムを利用することで、聴覚障がいのあるメンバーは、朝礼や面談の内容をタイムラグなく理解することができます。また、外国人従業員の日本語理解の補助にも役立ちます。
ERGsの活動を通じて寄せられた声は、製品やサービスの開発にもつながっています。LIXILオンラインショールームでは、AI音声認識による文字起こしアプリを活用した字幕サービスを開始するなど、耳が不自由な方にも安心して利用いただけるサービスを展開しています。
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