LIXILは、世界中の誰もが描く住まいの夢を実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しています。
2024年3月期実績
世界のエネルギー関連CO2排出量の約19%は、建築・建材業界の直接的な排出によるもので、住宅やビルなど建物の使用による間接的な排出も18%を占めています※1。LIXILは、「CO2ゼロと循環型の暮らし」を掲げる環境ビジョンの実現に向け、「気候変動対策を通じた緩和と適応」を重点領域の一つに定めるとともに、重要課題の優先項目に位置付けています。事業プロセスにおける環境負荷低減に努めると同時に、環境に配慮した製品やサービスの提供を通じて2050年までにCO2排出量実質ゼロを目指します。この長期目標は、2024年3月に国内建材業界では初めてSBTネットゼロ認定を取得しました※2。
さらに、LIXILの事業プロセスおよび製品・サービスの直接的なCO2排出量の削減にとどまらず、社会全体におけるCO2排出量の削減に貢献することが重要と捉えて取り組みを推進しています。また、気候変動への適応に貢献するため、自然災害対策や室内熱中症予防などへのソリューションを提供しています。
目標の実現に向け、「事業プロセス」「自社バリューチェーン」「インパクトの拡大」の各フェーズを通じた「低炭素社会への移行計画」を2024年4月に発表し、具体的な施策やアクションに取り組んでいます。事業活動や自社製品の使用に伴う環境負荷を最小限にするという企業責任を果たすだけでなく、あらゆるステークホルダーを巻き込みながら環境分野における新しい価値を創造し、地球環境や社会に対してより一層大きなインパクトを生み出すための包括的な戦略アプローチおよび中期目標を定めることで、取り組みを推進しています。
※1 国連環境計画(UNEP)(英語・別画面が開きます) >
※2 日本の建材業界初、LIXILの長期目標「2050年までにCO2排出量実質ゼロ」がSBTネットゼロ認定を取得(2024年3月)(別画面が開きます) >
LIXILは、2031年3月期までにScope 1 & 2のCO2排出量を2019年3月期比で50.4%削減する目標を定めています。CO2排出量の削減と事業活動による環境負荷の最小化に向けて、工場やオフィスでの徹底した省エネ活動や、再生可能エネルギーの利用、CO2排出量の少ない燃料への転換や電気への転換(電化)などに取り組んでいます。
水素燃焼によるアルミ形材のエージング処理
生産工程における課題の抽出や設備の見直しなど、拠点ごとの改善活動を通して、エネルギー使用の効率化と使用量の削減に取り組んでいます。GROHEブランド製品を製造するすべての工場および物流センターでは、エネルギーマネジメントシステムISO50001の認証を取得しています。
LIXILの製造工程では、材料から製品をつくる際の熱需要を満たすために多くの燃料を使用しています。国内では、サッシの製造工程のうちアルミの溶解や押出成形など大量の燃料を使用する工程において、IoT技術を用いて炉内の燃焼状況を見える化し、最適な燃焼状態に調整することでエネルギー使用量を大幅に削減しています。
これに加え、エネルギー転換を通じたCO2排出量削減の取り組みも進めています。低温域においては、化石燃料からより環境負荷の低いエネルギーへの転換を進めるため、再生可能エネルギー由来をはじめとする電気への切り替えを推進しています。また、有明工場では、これまで使用してきた石油系燃料から、燃焼時のCO2排出量や大気汚染物質となる窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)の排出量を削減できる天然ガスに切り替えました。
他方、高温域の製造工程においては、従来の燃料や製造方法での取り組みを超えたイノベーションが必要です。そこでLIXILは、水素への燃料転換やCO2を分離・回収し有効活用するCCUなどの新技術を取り入れたイノベーションや、研究段階にある新技術の応用も視野に入れ、 2030年以降の実用化を目指した検討を開始しています。2023年3月期には前橋工場の生産設備において、水素への燃料転換に向けた実証試験を行いアルミ形材の製造に成功しました。2024年3月期は、高温域のアルミ溶解工程・セラミック焼成工程がある全製品で、試験炉での水素実験を行い成果を上げています。水素への燃料転換に必要な設備仕様や投資などを踏まえ、製造の脱炭素化の選択肢の一つとして実用化を検討しています。
水素は、燃料としての供給インフラ整備に大きな課題がありますが、LIXILでは調達から使用までの一連のプロセスにおける技術確立を目指し、水素調達に関連した技術検証にも着手しています。アルミ形材を製造する小矢部工場において、2023年3月期に形材に着色する表面処理工程において行った検証試験では、発生する水素を90%以上の効率で回収することに成功しました。
クレン工場(タイ)
LIXILは、再生可能エネルギーへの移行を推進しています。その一環として、事業で使用する電力の100%再生可能エネルギー化を目指す企業イニシアティブ「RE100」に加盟しています。
国内では、生産工場14拠点、本社などの事業所6拠点、物流センター10拠点、営業所82拠点における使用電力に、再生可能エネルギー由来の電力を導入しています。海外では、LIXIL Internationalの水栓金具関連の工場・物流センター全10拠点を100%再生可能エネルギーに切り替えました。 その結果、2024年3月期の再生可能エネルギー比率は28.3%となりました。
生産工場では、再エネ電力証書の購入だけでなく、新たな再生可能エネルギー設備に対する投資を促す効果がある「追加性」を考慮し、国内外でPPA※モデルによる太陽光発電設備を導入しています。日本国外のオンサイトPPA事例として、GROHEの製品を生産する全5工場では約10,200MWhの電気を発電しています。そのうち、タイのクレン工場では3.2MWのソーラーパネルを建物の屋根に置き、毎年約2,000トンのCO2排出量削減に貢献しています。ドイツのヘーマー工場では約2万㎡の敷地に3.8MWのソーラーパネルを設置し、毎年約950トンのCO2排出量削減に貢献しています。この他、中国の大連工場、ジャンメン工場、蘇州科技工場およびベトナムのダナン工場でも、オンサイトPPAによる太陽光発電設備を稼働しています。また、オフサイトPPAについては、2023年3月期にメキシコの4工場で初めて導入されました。
国内では、8拠点でこれまで年間約34,000MWhを発電するメガソーラー発電施設を運営しており、2024年3月期には熊山工場でソーラーパネルを導入し自家消費を開始しました。また、オンサイトPPAによる太陽光発電設備については、2023年3月期に大谷工場、2024年3月期に有明工場、名張工場、久居工場、尾道工場、佐賀工場の国内5拠点で稼働を開始しました。
※PPA事業者が電力需要家の敷地や屋根などに太陽光発電設備を設置し、そこで発電した電力を電力需要家に販売する事業モデル
LIXILは、2031年3月期までにScope 3のCO2排出量を2019年3月期比で30%削減(SBT WB 2℃水準※)することを目指しています。LIXILのバリューチェーンにおける排出量(Scope 3)において、多くの割合を占めるのが「調達」と「製品使用」です。建物の建設に関わる直接的なCO2排出量と建物使用時の間接的なCO2排出量を含む、ライフサイクル全体でのCO2排出量削減が求められる中、調達や物流におけるサプライヤーなど他社との連携や、製品の省エネ化を進めています。さらに、より低炭素な原材料・部材の使用、リサイクル材の活用、製品の省資源化、製品寿命の長期化や再利用に配慮した設計を進めることで、製品・サービスのライフサイクル全体でのCO2排出量削減を進めています。
※世界の気温上昇を産業⾰命前より2℃を⼗分に下回る温室効果ガス排出量削減目標であるSBTiのwell-below 2℃水準
日本の建材業界初、LIXILの長期目標「2050年までにCO2排出量実質ゼロ」がSBTネットゼロ認定を取得(2024年3月) >
Scope 3の約4割を占める調達においてCO2排出量の削減を推進するには、サプライヤーとの連携が必要不可欠です。サプライヤーに対しては、LIXILの環境活動および調達先行動指針、国内ではこれらに加えてグリーン調達ガイドラインなどに沿った調達活動への理解と協力をお願いしています。
LIXILは調達に関わるCO2排出量の削減に向け、サプライヤーとのエンゲージメント活動を展開しています。2023年3月期には、CO2排出量の集計や削減目標設定の状況を把握することを目的に、国内外の調達によるCO2総排出量の上位80%のサプライヤーに対して、アンケート調査を実施しました。アンケートによる調査結果や個別サプライヤーとの対話をもとに、2024年3月期は、国内主要サプライヤー約400社に対して、LIXILの調達活動や排出量算定に関する説明会を開催したほか、新たにCO2排出量算定を始める意向のサプライヤーに対してScope 1, 2, 3算定ツールの提供や活用方法に関する説明会を行いました。また、説明会後には算定に向けたより実践的なサポートを行う算定フォロー会を積極的に行ってきました。2024年7月に算定フォロー会に参加いただいたサプライヤーを対象に実施したアンケートでは、約3割が算定レベルの向上や算定対象範囲が拡大したと回答しました。今後も、サプライヤーに対する講演会や説明会などを通じて算定支援を強化するとともに、個別サプライヤーとの協議を通じ、サプライヤーの排出量データの質や量、整合性を図りながらさらなる削減活動を進めていきます。また、海外サプライヤーに対しても、国や地域の状況に合わせた連携を推進していく予定です。
今後も、原材料の安定供給や責任ある調達に加えて、サプライヤーデータの取得活用や調達におけるCO2排出量削減に向けた連携を強化していきます。また、より低炭素な原材料・部材やリサイクル材の活用を通じて、バリューチェーン全体で効果的にCO2排出量削減を加速させていきます。
2024年3月期は、他社と物流を共同利用する「コンテナラウンドユース」の実施本数を拡大し、協働企業と合計で643コンテナのラウンドユースを行いました。こうした活動は、年間約85トンのCO2排出量削減につながっています。
また、積載効率の悪化とドライバー不足の解消に向け、同業他社との共同運送に取り組んでいます。北海道物流センターでは全道で共同運送を行い、協働企業との累積で走行距離を年間約59万㎞削減、CO2の荷主原単位を21%削減しました。2025年3月期には、東北物流センターでも共同運送を開始し、さらなる CO2排出量削減に貢献していきます。
LIXILは、省エネ型のトイレ製品やキッチン関連製品の提供を通じてCO2排出削減に貢献しています。トイレ製品では、使わないときは自動的に便座温度と温水温度を下げて節電する「スーパー節電」、スイッチ操作で一定時間ヒーターをオフにして節電する「ワンタッチ節電」などの機能により、例えばサティスSタイプでは年間111キロのCO2排出量を削減しています。
省エネ型トイレ製品のイメージ
LIXILは日本において、新築戸建住宅向け高性能窓の販売構成比率を2026年3月期までに100%とする目標と、節湯水栓や節水型トイレの販売構成比率を2031年3月期までに100%とする目標を掲げています。日本での一般的な住宅における消費エネルギーのうち、約6割を暖冷房と給湯が占めています。LIXILはこうした課題に対し、開口部の断熱性を高める窓・玄関ドアなどの製品、壁や天井、床など住宅全体の高断熱化を実現する高性能住宅工法、節湯・節水に貢献する水まわり製品、創エネ機能を有する製品・サービス、IoT技術を活用した宅配ボックス製品などを通じて、気候変動の緩和に向けたインパクトの拡大を進めています。また、台風や豪雨といった自然災害や猛暑による熱中症に備えるソリューションの提供を通じて、気候変動の適応にも貢献していきます。
省エネと資源循環を軸に、日本の地域の気候特性に合わせて効果的にCO2排出量を削減できる窓製品を提案する販売戦略「GREEN WINDOW」を2024年3月期に開始しました。日本の建材業界で今後主流となるLCA(ライフサイクルアセスメント)を用いた総CO₂排出量の算定を推進し、製品ラインナップを拡充することで事業プロセス、自社バリューチェーン、ユーザーの使用によるインパクトの拡大に貢献します。
GREEN WINDOW(別画面が開きます) >
報告書「ライフサイクル全体から考える地域ごとに最適な窓とは」(別画面が開きます)PDF:3.9KB >
屋外側に強度・耐久性に優れるアルミ、室内側に断熱性が高く結露を軽減する樹脂を採用し、双方の利点を活かした、ハイブリッド構造の窓。高性能ガス入りの中空層を2重に有し、ダブルLow-Eによる先進のトリプルガラス仕様で、圧倒的な断熱性能を実現しています。1枚だけの単板ガラス窓とトリプルガラスの高性能窓を比較した場合、熱流出を約8割抑えることができ、新築住宅におけるCO₂排出削減効果は37%です。高い断熱性能を実現することで、暖冷房のエネルギー消費量を減らし、CO2排出量の削減に貢献します。
TW施工イメージ
高性能住宅工法「まるごと断熱リフォーム」では、既存住宅の構造部分などを活かし、壁・床・天井・開口部などの断熱性能を高めることで、家全体をまるごと断熱リフォームできます。建て替えることなく高性能住宅に生まれ変わることで、既存住宅の省エネ化を推進します。また同工法の「スーパーウォール工法リフォーム」を用いて一棟を断熱改修する支援スキームは、2021年度省エネ大賞「資源エネルギー庁長官賞」を受賞しました。
まるごと断熱リフォームのイメージ
浄水器ビルトイン型のキッチン用タッチレス水栓で、浄水と原水の2つのスイッチを使い分けるだけでお好みの水を出すことができます。また、自動センサーによって吐水・止水を行うタッチレス機能と、湯水の使い分けができるエコセンター機能を持つ水栓製品により、省エネ・節水を実現しています。お湯を無意識に使うことがなくなるため、従来品と比較して、約37%※の省エネ、約30%※の節水が期待できます。
ナビッシュハンズフリー施工イメージ
節水と省エネを可能にするEcoJoy技術は、ほぼすべてのタイプや価格帯のシャワー製品に搭載されています。シャワーに組み込まれた流量調整機能により、水の使用量を自動で約50%抑制します。
GROHE EcoJoyイメージ
太陽の熱の約8割を窓の外側でカットして、室内温度の上昇を最大3.5℃※抑制することで、冷房エネルギー消費の削減や室内熱中症予防につながります。
スタイルシェード施工イメージ
台風時の飛来物による窓ガラスの破損・破片の飛散や、室内に吹き込む強風で屋根が吹き上がるリスクを防ぐなどの防災・減災効果があります。
住宅用窓シャッター施工イメージ