リーダーズメッセージ

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リーダー対談
Navigating the Impact Journey ~インパクト創出への道を切り拓く

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瀬戸欣哉CEOとインパクト戦略委員長を務めるジン・ソン・モンテサーノCPO (Chief People Officer) が同戦略の取り組み状況について語ります

  • 取締役 代表執行役社長 兼 CEO 瀬戸 欣哉 (右)
  • 取締役 代表執行役専務 人事・広報・渉外・Impact戦略 担当 兼 Chief People Officer ジン・ソン・モンテサーノ (左)
  • LIXIL Playbookとインパクト戦略

    インパクト戦略は、LIXILの事業戦略にどのように組み込まれていますか?

    瀬戸:この数年、LIXILを取り巻く事業環境は大きく変化しています。インフレ、物流危機、サプライチェーンの寸断など、世界的な課題に取り組む一方で、私たちは「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」というPurpose(存在意義)の達成を追求し続けています。それは、事業活動を通じて持続的成長を確保しながら、同時に社会に対するインパクトを創出することで、成し得るものと考えています。

    「LIXIL Playbook」は、私たちが事業を通じて何を目指し、どのように達成するのかを明確に示すロードマップです。道筋が明確になることによって、全従業員が同じ方向に向かって力を結集させることができます。当社は、2023年3月期に「LIXIL Playbook」を更新し、環境戦略を事業戦略に統合しました。「LIXIL Playbook」を支えるインパクト戦略は、事業と一体となって社会にインパクト(良い影響)を生み出すための基盤となっています。

    モンテサーノ: 私たちの社会課題に対する主体的かつ包括的なアプローチを踏まえた上で、昨年(2023年)4月、当社はコーポレート・レスポンシビリティ戦略をインパクト戦略へと更新しました。これにより、企業としての責任や事業の域を超えた取り組みをさらに加速しています。インパクト戦略は、「グローバルな衛生課題の解決」、「水の保全と環境保護」、「多様性の尊重」の3つの優先取り組み分野で構成されています。グローバル企業としての社会・環境に対するコミットメントにとどまらず、収益性の向上、ブランド・エクイティの強化、長期的な価値創造を目指すものです。

    この1年間で、従業員は徐々にインパクト戦略のコンセプトを理解し、自らのものとしてきました。LIXILがより積極的でソリューション志向の組織へ進化する過程において、インパクト戦略への移行は、従業員に対しても、また企業文化に対しても、すでに変化をもたらし始めています。施策の効果の検証と情報開示に意識的に取り組み、財務的成果を追求しながら、同時に、環境と社会にインパクトをもたらすことを目指しています。

    瀬戸: 持続的成長と社会へのインパクト創出に向けた価値創造の原動力は、従業員です。LIXILでは、多様な人材の確保や育成に注力し、継続的に取り組んでいます。D&Iの取り組みについては後ほど詳しくお話しすることになると思いますが、まずはインパクト戦略の他2つの優先取り組み分野について従業員が生み出してきたインパクトについて触れたいと思います。

    グローバルな衛生課題の解決

    「2025年までに1億人の衛生環境の改善を通じて生活の質の向上に貢献する」という目標達成に向けた取り組みの状況はいかがですか?

    瀬戸: 私たちは、SDGsのターゲット6.2(2030年までに、すべての人びとの、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成)に向けたインパクトの最大化を目指して、また革新的なビジネスモデルをさらに発展させていくために、あえて野心的な目標を設定しました。ここ数年は困難な状況が続いてはいますが、目標達成に向けて大きな進展を遂げています。従業員は、この目標を達成するために全力を尽くして取り組んでおり、必ずや達成できると私は確信しています。

    モンテサーノ: 瀬戸さんのコメントを補足すると、私たちはこれまでに45ヵ国で約6,800万人(2024年3月31日現在)の衛生環境を改善してきました。とても誇らしいことです。SATOをソーシャルビジネスとして立ち上げた当初は、家庭用のSATOトイレ1種類しかありませんでしたが、2020年以降、SATOブランドは、様々な使用状況に応じたトイレや手洗いソリューションなどポートフォリオを拡大しています。また、地方自治体や人道支援団体とも連携を深めることで、学校、医療施設、コミュニティトイレ、難民キャンプなど、より多くの人が使用する場所にSATO製品を設置することが可能になりました。これにより、家庭への設置と比べて、製品1台当たりのインパクトが拡大しています。

    昨年は、LIXILとユニセフの先進的な取り組みであるグローバル・パートナーシップ「MAKE A SPLASH!」が丸5年の節目を迎えました。ユニセフ内で最大の共有価値型パートナーシップであり、水と衛生(WASH)の領域に焦点を当てています。このパートナーシップは開始以来、顕著な進歩を遂げ、多様な地域に住む1,270万人の人びとが基本的な衛生整備へのアクセスを得ることを可能にしました。特に公共および民間の財政を活用し、変革を促進することに重点を置いています。また、このパートナーシップによって、政府から220万ドル以上、そして一般消費者から490万ドル以上が集まり、衛生環境の改善に向けた政策を具体的な行動に移すことができました。私たちは、各国で衛生課題の解決に取り組む仲間を後押しし、すべての人びとが適切な衛生設備にアクセスできるようにするために、5年間のパートナーシップから得られた学びを公開しています。

    グローバルな衛生課題の解決について、SATO以外での進展はありますか?

    瀬戸: とても楽しみなニュースとして、LIXILが、「第2世代再発明トイレ(G2RT: Generation II Reinvented Toilet)」技術の初の商業ライセンスパートナーに選定されました。G2RTは、排泄物を直接その場で処理し、排泄物の液体部分を再利用して流す機能を備えた独立型トイレシステムです。ビル&メリンダ・ゲイツ財団との長年にわたる協力やジョージア工科大学との4年間のパートナーシップによる成果だと言えます。

    この技術は、下水処理システムや浄化槽といった従来のインフラがなくても安全なトイレへのアクセスを可能にし、病原体を根本で排除して水の汚染と病気の拡散を防ぎます。特に人口過密な新興都市における衛生課題を解決する可能性を秘めています。LIXILは、世界の衛生課題の解決に向けて重要な役割を担っています。公共施設と家庭の両方での使用に適した製品に技術を洗練させるため、今後も研究開発への投資を継続し、G2RTの実用化に向けて取り組みを続けていきます。

    瀬戸 欣哉

    水の保全と環境保護

    環境の分野ではどのような取り組みを行っているのでしょうか?

    瀬戸: 世界の環境課題解決に向けたインパクトを拡大するため、「LIXIL環境ビジョン2050」の達成に向けた中期目標を2023年3月期に発表しました。3つの重点領域である「気候変動の緩和と適応」、「水の持続可能性を追求」、「資源の循環利用を促進」それぞれに対して目標を設定しています。昨年、環境戦略と事業戦略を統合したことで、社内外のステークホルダーとの連携による取り組みが加速し、成果につながっています。

    今年3月には、「2050年までにCO₂排出量を実質ゼロにする」という長期目標に基づき、日本の建材業界で初めてSBTネットゼロ認定を取得しました。この認定は、LIXILの中期および長期の目標が、科学的根拠に基づく定量的および定性的基準を満たしていることを示しています。これは、「LIXIL環境ビジョン2050」で掲げる「Zero Carbon and Circular Living(CO₂ゼロと循環型の暮らし)」の達成に向けた重要なマイルストーンであり、今後も低炭素社会への移行に向けてインパクトを拡大していきます。

    環境に関する開示の厳格化についてどのように考えていますか?

    モンテサーノ: 2022年3月期以降、LIXILは気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づいた報告書を公開しています。昨年12月には、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の提言に賛同し、TNFDフォーラムへ参画、今年の初めにはTNFD Early Adopter(早期採用者)に登録しました。これを受け、6月に公表した報告書ではこれまでの気候変動を含む環境課題に関する情報開示に包含されている自然関連課題の情報をTCFD・TNFD提言に関連付け、開示を統合しました。

    TNFD対応の1年目として、まずはTNFDの観点から私たちの事業活動の現在地を確認することにしました。特に原材料に関して、環境への依存と環境への影響の2つの側面から検討し、その結果、当社が使用する原材料の中で、木材への依存度が最も高く、またアルミの影響度が最も高いことを確認しました。したがって、木材とアルミに焦点を当てたリスクと機会を検証し、私たちが行うべきことを今後も深堀りしていくつもりです。

    瀬戸: 環境の面では、今年、CDP「気候変動」分野において最高位となるAリスト評価を受けたこともお伝えしておきたいところです。これは、環境戦略を事業戦略に統合した結果もたらされた成果だと考えています。これからも、革新的で持続可能な環境ソリューションを世の中に提供し、ビジネスパートナー、エンドユーザー、その他すべてのステークホルダーの皆さまとの連携を強化しながら、この地球に良い影響をもたらす取り組みを進めていきます。

    多様性の尊重

    LIXILにとってなぜD&Iが重要なのでしょうか?またその取り組みをどのように推進していますか?

    瀬戸: 「LIXIL Playbook」の戦略的優先課題を実行するために必要不可欠なのがイノベーションです。製品であれ、ビジネスモデルであれ、サービスであれ、イノベーションなしでは、コモディティ化したビジネスとして利益が取れなくなります。 LIXILでは、従業員が価値創造の原動力です。LIXILの将来の収益の柱となる新しいコアビジネスを自律的に開発できる組織を築くため、我々はD&Iの文化を醸成し、イノベーションを促進する職場環境を整備しています。

    具体的には、強力な人材基盤の構築に向けて、学習と能力開発に必要な柔軟な環境とツールを提供しています。ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネス(Tuck School of Business)と連携したシニアエグゼクティブやハイポテンシャル・リーダーを対象としたイノベーション研修プログラム、管理職のコーチングスキルや部下育成力の向上を目的として日本で先行開始した「GROW」プログラム(長期間にわたって各自のペースで進められるプログラム)、基本スキルの習得に適したオンライン学習「LinkedInラーニング」など、様々な機会を提供しています。こうした取り組みは従業員にも浸透しており、従業員意識調査「LIXIL Voice」において、75%の従業員が学習機会を得ていると回答しています。

    D&I推進に関して、他にどのような取り組みを行っていますか?また、従業員はその変化をどのように受け止めていますか?

    モンテサーノ: 過去4年間にわたり、従業員の声に耳を傾け、そのニーズを検討してきました。従業員のエンゲージメント、ウェルビーイング、帰属意識を高めることに重点を置き、とりわけ売上の大きい日本において、人事制度の見直しを優先的に行いました。すべての従業員の働きやすさとインクルージョンを促進するため、ハイブリッドで柔軟な働き方を採用し、介護などのプライベートな事情に対処しながら会社に貢献し続けられる環境を整えました。

    ジン・ソン・モンテサーノ

    様々なライフステージにおける従業の柔軟な働き方を支援するなど、私たちのD&I推進の取り組みの効果は顕著に表れています。LIXIL Voiceによると、日本の30代女性従業員のインクルージョンのスコアが過去2年間で3%上昇しています。また、株式会社LIXILで2024年3月期に育児休暇を取得した男性従業員の比率は前年の77.3%から87.3%に増加しました。また、2024年3月期に実施したPeople & Organizational Development(人材組織レビュー)では、高いポテンシャルを持ち将来重要なポジションを担うことが期待される後継者候補として特定された187人のうち、57人(30.5%)が女性でした。

    ※LIXIL独自の育児休暇制度である「ぱぱの子育て休暇」を含む。

    瀬戸: LIXILのインクルーシブで公平な職場づくりへの取り組みは、世界中で高く評価されています。2023年に、米フォーブス誌の「World’s Top Companies for Women in 2023(女性にとって働きやすい職場2023)」の一社に選ばれたことは、本当に誇らしいことです。世界中のトップ企業400社の中で46位、日本に本社を置く企業としては1位、そしてエンジニアリング・製造業部門では、全世界で2位となりました。従業員を中心に据えた方針を推進してきた結果、LIXILは選ばれる企業になりました。今後の人材戦略における最優先事項は、グローバルに活躍できる日本国内の従業員の確保と維持であり、ここには特に注力していく考えです。

    イノベーションを通じた社会と環境へのインパクト

    最後に、LIXILのイノベーションが社会や環境にどのような影響を与えているのか、いくつか具体的な事例を教えてください

    モンテサーノ: もちろんです。まず、先に触れたように「LIXIL Playbook」において、「環境戦略の事業戦略への統合」を優先課題に設定しています。社会や環境課題の解決に大きなインパクトをもたらす差別化された製品の提供において、すでに大きな成果を上げています。原材料の100%にリサイクルアルミを使用した低炭素型アルミ形材「PremiAL R100」は、脱炭素・資源循環型社会の実現に大きく貢献します。GROHE 「Everstream」は、水をリサイクルするシャワーシステムで、水の節約だけでなくCO₂排出量の削減にも貢献できる製品です。

    また、泡シャワー「KINUAMI」は、入浴介助が求められる現場など、幅広い消費者ニーズに応える製品です。さらに、瀬戸さんが先ほど触れたG2RTは、過密都市での衛生課題を解決する可能性を秘めています。こうしたイノベーションを生み出すためには、多岐にわたる顧客ニーズを真に理解するために必要な様々な視点や価値観を持った従業員が、その能力を存分に発揮できる環境を整えることが何よりも重要です。

    瀬戸: 事業活動を通じて社会・環境課題の解決に貢献することは、企業として果たすべき役割です。こうした活動は社会全体に利益をもたらすだけでなく、当社事業の持続可能性を高める上でも、非常に重要です。今後も「LIXIL Playbook」に沿って全社一丸となり、インクルーシブかつアジャイルな組織として、事業活動による財務成果の追求と持続可能で長期的なインパクトの創出に全力を尽くしていきます。

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