SATO Tap:
新しい衛生ソリューションで手洗いをすべての人に

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更新:2020年6月22日

商品についてはこちらのサイトをご覧ください(英語のみ): www.sato.lixil.com/satotap

多くの画期的なアイディアは、ひょんなことから生まれるものです。お風呂で6歳になる息子が、プラスチックのおもちゃからもう一つのおもちゃに水を移動させて遊んでいるのを見ていたChief Engineer and Marketing Officer, SATOの石山大吾は、あることを思いついたのです。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大防止策として、手洗いが有効な手段であることは言うまでもありません。しかし、こまめに手を洗うことすら困難な状況にある貧困層の人びとは、世界に大勢いるといわれています。石山は、このような人びとを救うことができる、低価格でシンプルな構造の手洗いソリューションを思いつき、数週間足らずでSATO Tapを考案しました。

しかしそのプロセスは、一筋縄ではいかなかったと石山は言います。米・ニュージャージー州にある自宅のガレージと地下室で、5つの設計案を考え、試作品を作り、テストを行うという試行錯誤を重ねました。

水道設備のない家庭向けに考案した手洗いソリューションSATO Tapについて語る石山大吾(動画)

多くの人に、手洗いソリューションを届けるには

実は、石山自身も3月にCOVID-19に感染し、心身ともにストレスを感じながら、このウイルスと闘ってきたのです。開発途上国向け簡易式トイレシステム「SATO」の事業に携わってきた石山は、家族へのウイルス感染を防ぐため部屋に隔離された生活を送りながら、事業を展開している地域がCOVID-19による大打撃を受け、手洗いができない数多くの人びとがいるという不平等さを伝えるニュースを目にしました。6月初旬の時点で、世界中で670万人近くが感染していると診断され、40万人近くが死亡している中で、石山が無事回復できたことは不幸中の幸いでした。

彼はすぐに行動に移し、インターネットで既存の手洗いソリューションについて調べ始めるとともに、SATOに携わるアジアやアフリカの同僚に動向をヒアリングしました。 そして、深刻な状況に置かれているこれらの地域の人びとを救うことができるソリューションを開発しようと決意したのです。

LIXILはソーシャルビジネスとして、開発途上国向け簡易式トイレシステムSATOを提供していますが、その製品開発に携わったのは他ならぬ石山でした。納得できるような手洗いソリューションを考案することは他人事ではなかった、と彼は言います。

「先進国では衛生環境が整備され、当たり前のように水やトイレ、手洗い設備を使うことができます。これらは人びとが生きていくために欠かせないものですが、それは開発途上国においてもまったく同じであるはずです。」

石山は続けます「COVID-19が世界中で猛威を振るう中、手洗いの重要性が叫ばれています。一方で、水や石けんが簡単には手に入らず、効果的な手洗いの習慣がない地域もあるという不平等な世界の現実が露呈したといえます。」

ユニセフによると、世界人口の40%が家庭で基本的な手洗い設備を利用できない状況にあります。このような環境で暮らす人びとは、後発開発途上国では人口の75%にものぼります。

ロックダウン中に生まれたイノベーション

石山が考案した手洗いソリューションは、ペットボトル内の水と重力を利用した仕組みで、無駄なく最小限の量で安定して水を放出できるよう設計されています。コネクタはさまざまな大きさや形状のペットボトルに合うよう設計され、石けんホルダーも付属しています。

「最終的に仕上がった製品は、2つのプラスチック部品で構成されています。開発途上国でも非常に一般的な射出成形法とブロー成形法と呼ばれる2つの方法で大量生産が可能です。シンプルな設計のため、金型や部品のコストを抑えることができます。持続的な衛生習慣の改善につなげるためには、低価格で提供することを忘れてはいけません。ユーザーである地域の人びとにとって手の届く価格帯であることが何よりも重要です。これはSATOのビジネスすべてに共通しています」と石山は説明します。

まずエンドユーザーの視点から問題を理解し、最も適切で効果的な解決策を生み出すというアプローチを取ることが重要だといいます。

自宅の地下室からビデオチャットで製品の仕組みを説明する石山

「現地のニーズを理解し、方向性を定め、製品開発に役立つ情報を共有しあいながら、チーム一丸となって取り組みました」と石山は言います。

厳しいロックダウンの中で、開発プロセスにおけるユーザーテストは石山の妻と息子によって行われました。また、石山は、3D印刷サービスを提供している地元のプロトタイプ制作会社に協力を求めました。3D印刷技術がCOVID-19と戦う医療従事者のための防護具製造目的に優先的に使われるよう配慮しながらも、根気強くSATO Tap開発に取り組んだのです。

最も必要とする地域の人びとに届けるために

パンデミック以前から、LIXILのSATOブランドでは、下水道が整備されていない農村部や都市近郊のコミュニティに、持続可能な衛生ソリューションとして、低価格で安全なトイレを提供してきました。これまでに380万台の簡易式トイレシステムSATOを出荷し、世界38カ国以上で1,860万人の人々の衛生環境を改善してきた実績があります。

こうした取り組みは、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)にも合致しています。ユニセフやWater Aidなど、志を同じくするNGOや民間企業などと密に連携して、衛生環境の改善が最も求められるコミュニティの人びとを支援する活動を行っています。また、2025年までに1億人の衛生環境を改善するという高い目標を設定し、取り組みを加速させています。

石山が作ったプロトタイプの有効性は実証され、次のステップは、緊急性の高い地域の人々に、このソリューションをいかにスピーディーに届けるかということでした。

SATO Tapはまず、インドで生産が開始される予定です。パンデミックの影響下においても、金型製作や物流の稼働率が比較的高いことに加え、SATO事業におけるビジネスパートナーとのネットワークが既に確立されており、確固とした基盤があることが決め手となりました。

インドから輸出することで、世界の最も深刻な状況におかれている多くの地域に届けることができます。そして、インドに次ぐ生産拠点は、アフリカになる見込みです。

LIXILは、この手洗いソリューションの提供拡大を加速させるために約1億円(US$100万)を拠出します。また、ユニセフとの既存のパートナーシップにより、COVID-19の感染拡大防止に向けて手洗い・衛生分野での活動を拡大していきます。開発途上国の商習慣や行動様式に関する情報に基づいて行動変容を促すほか、衛生プログラムを推進するための共同提言、官民双方の既存のネットワークとサプライチェーンを最大限に活用して手洗い設備の普及活動を進めるなど、多岐にわたる活動を展開します。

世界中の人びとにこまめな手洗いを呼びかけることに加え、そのための設備を提供することの両方がどれほど重要であるか、石山は身を持って実感しています。

「たとえCOVID-19が終息しても、私たちはその次に起こりうる脅威に備えなくてはなりません。次のパンデミックは今後100年以上起こらないかもしれませんが、すぐにまたやってくる可能性もあります。そのために、できる限り多くの人が、手洗いができる環境を整えなければいけません。そのためには、手洗いという衛生習慣を浸透させ、こまめな手洗いができるソリューションを届ける必要があるのです。」

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