LIXILは、世界中の誰もが描く住まいの夢を実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しています。
中国ではオンラインショッピングなどのEコマース(電子商取引、EC)が驚異的なスピードで拡大しています。20年余り前には世界の1%にも満たなかったオンライン取引の市場規模は、今や世界の半分以上を占めるほどになりました1。ソーシャルメディア(SNS)の利用者数も世界で最も多く、全消費者のおよそ84%がSNSプラットフォームで買い物をした経験を持っています2。
社会のデジタルシフトが加速する中で、人々の消費行動も様変わりしています。中国の一般的な消費者はモバイル端末での情報収集に毎日約7時間を費やしており、その3分の2はSNSアプリなどの利用に使われています3。何を買うかを決める上で、SNSメディアやインフルエンサーのコメントが大きな影響力を持っています。
こうした中国のEコマース拡大は、LIXILにも大きな変化の可能性を生み出しています。これまで販売代理店などとの「B2B」(企業から企業)取引が中心になっていたLIXILにとって、Eコマースは消費者との直接の接点を広げる舞台となり、顧客ニーズをつかみ、将来の製品開発やサービスをさらに強化できるからです。
「LIXILは消費者に単一の製品ではなく、トータルなサービスを提供するソリューションプロバイダーを目指しています」と、LIXILの中国の水まわり事業を統括するAdele Taoは言います。「住宅設備の業界は、伝統的な手法が主流となっていましたが、私たちはデジタル化を通じて、実際の顧客やニーズについてさらに学ぶことが極めて重要なのです」
LIXIL が中国でのデジタル戦略を強化する大きな契機になったのは、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的な流行でした。自由な外出や実店舗での買い物が制約される中で、人々はオンライン上での情報収集や商品、サービスの購入を増やし、ECサイトにはスマホなどを通じて新規の顧客も含めたアクセスが殺到しました。
そうした中、LIXILはオンラインと実店舗をつないだ24時間365日対応の住宅リフォームサービスを開始しました。ロックダウン下でもバスルームやキッチンをアップグレードしたいという消費者のニーズに迅速に対応するサービスとして利用されています。
さらに、全国数百カ所にオンラインと店頭のサービスを結び付けたO2O(Online to Offline)店舗をオープンし、実店舗に来られない顧客に向けてLIXIL製品を紹介するビデオなどのライブストリーム配信を始めました。さらにEコマースやSNSのプラットフォームを通じて消費者への直接のデモンストレーション活動を行なっています。
顧客はウエブサイト、スマホアプリ、SNS、実店舗などを効率的に活用でき、オンライン、オフラインの違いによる制約を受けることなくシームレスなショッピングを楽しむことができます。
こうしたデジタルサービスの強化には、これまでとは違う新しいユーザー体験を提供する狙いがあります。「One Product, One Code(1製品、1コード)」と呼ばれるプロジェクトも立ち上げ、購入後のアフターサービスをデジタル化し、顧客に電子保証を発行することで、販売後の製品の状況を追跡し、品質管理を改善するデータの収集にも役立てています。
LIXILのChief Digital Officerを務める金澤祐悟
「素晴らしいユーザー体験を作り出すには、まず消費者に対する理解を高める必要があります」とLIXIL Chief Digital Officerである金澤祐悟は言います。人々は何を求めてLIXILとの接点ができるのか、それを見極めるうえで大きな役割を果たしているのがグローバルなデータベースである「Consumer Data Platform」です。
このプラットフォームには、実店舗を訪れた顧客とのやり取り、ECサイトやソーシャルメディアチャンネルの利用状況など、世界中の顧客に関するデータが集まっています。どのような顧客がどこに住んでおり、どの製品に関心を持っているのか、彼らに製品や情報を提供する最善の方法は何か、などをより明確に把握することができます。
消費者に関するデータは、変化するニーズに応える新製品を生み出し、売上増加や再購入率の上昇にもつながります。LIXILのパートナー企業や設計事務所、販売代理店にとっても、顧客ニーズをふまえた上で、ビジネスの手法を見直す手がかりにもなります。
消費者が車の買い替えや旅行への出費のかわりに、新しいバスルームやキッチンに投資したくなる―。LIXILが目指しているのは、そのような魅力的なユーザー体験を提供することです。
「LIXILはこの業界のリーダーとして、他の産業に向けられている消費者の投資を引き寄せるようなサービスを展開する必要があるのです」と金澤は言います。
様々なライブストリーミング、IoT(Internet of things、モノのインターネット)、メタバースなど、デジタルテクノロジーの進化が顧客とのつながりを大きく変えています。企業はこれまでの発想を転換し、製品やブランドのあるべき姿をとらえ直す必要があります。
LIXILは中国だけでなく、全世界でデジタル・トランスフォーメーション(DX)を進めています。最終ユーザーである消費者にこれまでとは違うサービスを提供し、LIXIL製品に対する愛着や満足度を高めてもらうことが大きな目的です。
LIXILで中国の水まわり事業を統括するAdele Tao
「お客様に私達の製品が渡った後も、お客様とのつながりを保ち、生涯にわたる関係を築き上げることが重要です」とTaoは話します。デジタルの力を駆使し、いかに消費者と強いつながりを構築できるのか、LIXILの変革の取り組みは続きます。