グローバルな衛生課題の解決

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2023年3月期実績

SATOブランド製品
累計出荷台数
750万台
SATOブランド製品
年間出荷台数
100万台
(4年連続)
SATOブランド展開地域
45ヵ国以上
衛生環境が改善された人の数
4,500万人
活動の歩みとロードマップ
SDGsアイコン(ゴール3、5、6、9、17)

背景

世界では、安全に管理された衛生設備(トイレ)※1を使用できない人は2022年時点で約34億人に上り、そのうち約4.1億人は日常的に屋外で排泄をしています※2。不衛生な環境は命を脅かし、1日当たり約700人を超える5歳未満の子どもが、衛生問題に起因する下痢性疾患で亡くなっています※3。また、世界人口の4人に1人にあたる約20億人が、家庭で基本的な手洗い設備を利用できていません※2。手洗い設備の不足は、感染症の拡大を引き起こす危険性があります。

安全で衛生的なトイレや手洗い設備の不足は、すべての国や地域に悪影響を及ぼし、成長と発展の可能性を妨げています。またトイレの不足は、人びと、特に女性や女児に対して危険をもたらします。人目につかない場所まで用を足しにいく途中で、性的暴行を受けたり、動物に襲われたりするケースがあるほか、初潮を迎えた女子生徒が通学をあきらめざるを得ない原因にもなり、男女の教育格差にもつながっています。劣悪な衛生環境が世界に与えた経済損失は、2015年で2,230 億米ドル(約22兆円、1 米ドル=約100円で換算※4 )に達しました。世界保健機関(WHO)と国際連合児童基金(ユニセフ)が2023年に発表した共同報告書※2 では、このような衛生課題(ターゲット6.2)を含むSDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」について、2030年に向けた野心的な目標を達成するには、進捗のペースを現在の5倍に加速すべきとしています。政府、NGO、民間企業など、様々なセクターの連携が求められており、LIXILはこうした取り組みを推進していきます。

※1 「安全に管理された衛生設備(トイレ)」とは、WHOとユニセフの共同監査プログラム(JMP)による報告書「家庭の水と衛生の前進2000-2022 」に定義されており、以下のすべてを満たすトイレを指します。
・排泄物が他と接触しないように分けられている、あるいは、別の場所に運ばれて安全で衛生的に処理される設備を備えている
・他の世帯と共用していない
・改善された衛生設備(トイレ)(以下を含む)
ネットワーク化された衛生設備
- 下水道に接続された水洗トイレと注水式トイレ
オンサイト衛生設備
- 浄化槽またはピットに接続された水洗トイレまたは簡易トイレ
- 換気式の改善されたピットトイレ(VIP)
- 足場付きピット式トイレ(耐久性があり、清掃が容易な材料でつくられたもの)
- コンポストトイレ(足場付きツインピットトイレやコンテナ式システムなど

※2 「家庭の水と衛生の前進2000-2022」(WHO・ユニセフ共同監査プログラム(JMP)による報告書)(英語・別画面が開きます)>

※3 ユニセフ(英語・別画面が開きます)>

※4 「衛生環境の未整備による社会経済的損失の分析」(2016年発行、オクスフォード・エコノミクス、ウォーターエイド、LIXIL)(別画面が開きます)PDF:27.2MB >

戦略とマネジメント

戦略

LIXILは、Purpose(存在意義)である「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」を目指す上で、「グローバルな衛生課題」を緊急性の高い世界的な社会課題として認識し、3つの優先取り組み分野の一つに定めるとともに、重要課題の中でも優先すべき課題として位置付けています。革新的で低価格なトイレや衛生ソリューションを提供することにより、2025年までに1 億人の人びとの衛生環境の改善を通じて生活の質の向上に貢献することを目指しています。

LIXILは、目標達成に向け、SATO 事業を基軸に取り組みを推進しています。2013年に一つの製品から始まったSATO 事業は10周年を迎え、現在では製品ポートフォリオを拡充し、低価格で耐久性に優れた革新的なトイレや衛生製品・備品を提供しています。地域の特性やニーズに合わせて、「SATOトイレシステム」「コネクションシステム」「SATO Tap」などの製品開発を行っています。また、エンドユーザーのニーズに対応するだけでなく、消費者の行動変容につながるような製品開発に取り組むことで、社会により良い変化をもたらしています。2023年3月期に刷新したブランドメッセージ「A BETTER LIFE. EVERY DAY.」のもと、これらの革新的な製品・サービスを開発・提供することを通じて、あらゆる地域の人びとの生活の質の向上と明るい未来に貢献しています。また、生活の質の向上を実現すると同時に、市場ニーズが安価なSATOブランド製品から、LIXILの上位製品へ移行することを想定しています。

市場ニーズが安価なSATOブランド製品から、LIXILの上位製品へ移行することを想定

SATOの革新的な衛生ソリューションは、45ヵ国以上に広く導入され、高い評価を獲得しています。これに加え、製品ソリューションの提供にとどまらない取り組みを通じて、さらなるインパクト拡大を目指しています。SATO事業では、現地における職人や実業家の育成のほか、Make(作る)、Sell(売る)、Use(使う)というサイクルを回す現地の生産・販売体制の構築などに取り組み、様々な地域で衛生市場の確立と経済効果の拡大に貢献しています。また、特に深刻な衛生課題を抱える農村や都市部の住民に対しては、独創的な啓発活動を通じて、衛生環境が家庭やコミュニティにもたらすインパクトに関する理解を促進しています。LIXILは、これらの取り組みを多様なステークホルダーと連携しながら進めることで、コミュニティにより大規模なインパクトをもたらしています。ユニセフとのグローバルパートナーシップの拡大、米国国際開発庁(USAID)とのパートナーシップの締結、FINISH Mondialとの金融サービスを融合した連携のほか、国際協力機構(JICA)やNGO、現地のメーカーや販売店との連携を通じて、衛生課題解決に向けて総合的にソリューションを提供するためのパートナーシップのプラットフォームやビジネスモデルの構築を進めています。これらの取り組みには、社会課題の解決に向けて民間企業が果たす役割や価値を強化するインパクトがあります。

LIXILは、1億人の衛生環境と生活の質の向上という野心的な目標を掲げることで、SATOの革新的な製品・サービスの提供にとどまらないインパクトのある取り組みを加速させています。

課題とソリューション

課題 ソリューション 特長
・トイレが設置されていない家庭、施設が多い
・上水道や水の供給量の不足
SATOトイレシステム ・低価格
・設置が容易
・少ない水で洗浄
上水道や手洗い設備、水の供給量の不足 SATO Tap ・低価格
・コンパクト
・ポータブル
・少ない水で洗浄
・簡単に操作できる

体制

グローバルな衛生課題の解決に向けた戦略および取り組みは、SATOアドバイザリーボードのもとに統括されています。SATOアドバイザリーボードでは、SATO事業の取り組みの進捗報告(四半期に1回)、目標およびインパクト拡大に向けた進捗報告(半期に1回)を行うほか、戦略に基づく様々な施策検討を行っています。協議・決議された内容は、インパクト戦略委員会を通じて四半期ごとに執行役会に報告されています。執行役会は、重要課題に対する目標や実行計画について協議・承認し、取締役会は、それらに対する進捗状況を半期ごとに報告を受け、議論・監督を行っています。

推進体制

推進体制

SATOトイレシステム

SATOブランド製品累計出荷台数
750万台
SATOブランド展開地域
45ヵ国以上
衛生環境が改善された人の数
4,500万人

開発途上国向け簡易式トイレシステム「SATO」は、安全で衛生的なトイレが不足する農村や都市部での利用を想定した、シンプルな構造で設置がしやすく低価格なトイレシステムです。1L以下の少ない水で洗浄でき、排泄物を流すとカウンターウエイト式の弁が開き汚物が流れます。その後、弁が閉まることで、ハエなどの虫による病原菌の媒介や悪臭を低減する仕組みになっています。安全で衛生的なトイレが不足する農村や都市部における衛生環境の改善に貢献しています。

バングラデシュの住民へのヒアリングをもとに開発された初代モデルのSATO Panは、2013年にSATOブランドの最初の市場として同国で生産・販売が開始されました。SATOブランド製品は現在、アジア、アフリカの8ヵ国で生産し、10ヵ国で販売しています。年間出荷台数は、4年連続で100万台を突破しました。これまでに45ヵ国で約750万台を出荷し 、約4,500万人の衛生環境改善に貢献した計算になります(2023年4月現在)。

※SATOブランド製品の累計出荷台数

SATOトイレの仕組み

SATOトイレの仕組み

「SATOトイレシステム」が使用されている国

「SATOトイレシステム」が使用されている国

SATO Tap

COVID-19の感染拡大防止策として2021年3月期に開発されたSATO Tapは、家庭や地域コミュニティ向けの低価格な手洗いソリューションです。LIXILは2021年3月期以降、製品販売を通じて手洗い設備へのアクセスを改善することで、感染症の予防に貢献しています。

SATO Tapは、多様な形状や大きさのペットボトルに対応した設計になっており、重力を利用して、最小限の水量を無駄なく安定して放出します。1回の手洗いに必要な水量はわずか100mlで、通常の水栓に比べて90%の節水を実現します。また、プラスチック製の本体とノズルで構成されるシンプルな設計により、低コスト・低価格を実現しています。一般に入手しやすいペットボトルをSATO Tapで再利用することで、プラスチックごみの削減にも貢献します。

SATO Tapのアイディアは、SATOトイレシステムの製品開発に携わってきた従業員が、自身もCOVID-19に感染したことをきっかけに生まれたものです。水や石けんが容易に手に入らない、手洗い設備がない、効果的な手洗い習慣がないといった地域がある中、こうした課題に対するソリューションの開発が緊急に求められていました。様々な地域で利用できる製品を目指して、シンプルな材料や生産方法、手に入れやすい価格帯など、現地のニーズやエンドユーザーの視点を重視しながら、開発が進められました。

ペットボトルを活用した手洗いステーション「SATO Tap」

ペットボトルを活用した手洗いステーション「SATO Tap」

SATO Tap寄贈数
50万台

COVID-19の感染拡大を受けて、ユニセフなどとのパートナーシップを通じて、これまでアフリカ、東アジア・南アジアの計12ヵ国で50万台を寄贈しました。2022年3月期にはインドで生産・販売体制を構築し、2023年3月期に生産・販売を開始したタンザニアでは、アフリカ域内への輸出も行っています。

低価格で購入しやすいSATO Tapの提供を通じて、手洗い設備へのアクセスを改善し、生活の質の向上に貢献するとともに、コミュニティ・エンゲージメントを通じて手洗いの重要性を伝える意識啓発にも取り組んでいます。例えばインドでは、JICAによる衛生習慣を広める「アッチー・アーダト(良い習慣)キャンペーン」と連携し、農村地域や学校、病院などにおいて、アニメーションなどを活用した講義とともに、実際にSATO Tapを体験してもらいながら、手洗いの重要性を伝えました。2023年3月期にはフィリピンで、ドイツ国際協力機構 (GIZ)によって学校環境下での手洗い用の水使用量の調査が行われ、SATO Tapの高い水利用効率が確認されました。

SATO Tap (英語・別画面が開きます)>
SATO Tap動画 (英語・別画面が開きます)>

インドにおける啓発活動の様子(©国際協力機構(JICA))

インドにおける啓発活動の様子(©国際協力機構(JICA))

フィリピンの学校における手洗い用の水使用量に関する調査で使われたSATO Tap ©GIZ, Fit for School

フィリピンの学校における手洗い用の水使用量に関する調査で使われたSATO Tap ©GIZ, Fit for School

地域の状況に合わせた製品開発

SATO事業では、様々な顧客のニーズに対応するために製品ポートフォリオをさらに拡充するとともに、持続可能なソーシャルビジネスの実現に取り組んでいます。SATOの幅広いソリューションには、簡易式トイレの設置や既存のトイレのアップグレードに活用できるSATO Panのほか、子どもや高齢者、妊娠中の方、障がいのある方も安全かつ快適にトイレを利用できるSATO Stoolなどが含まれます。また、汲み取り式トイレの便器と便槽をつなぐ独自のコネクションシステムであるI-TrapとV-Trapは、短時間で施工でき、安全な衛生環境を簡単に実現しやすいという特長があります。

V-Trapを施工する様子

V-Trapを施工する様子

インドでは、ピット(便槽)が2つある2ピットシステムのトイレが政府により推奨されていますが、排泄物が詰まりやすい、施工に時間がかかるといった課題がありました。V-Trapは、従来の配管方式とは異なり、独自の弁を備えた調節可能なV字型の配管によって、2ピットシステムのトイレ施工における課題を解決しました。 V-TrapとSATOトイレシステムを組み合わせることで、排泄物が詰まるリスクを軽減し、汚物を流すのに必要な水の量を従来のトイレに比べて約8割削減します。SATO独自の2ピットシステムトイレは、低価格で効果的なソリューションとして、インドやその他の地域における安全な衛生環境の実現に貢献しています。

2023年3月期は2つの新製品を発表し、ポートフォリオのさらなる拡大を進めました。短時間でのトイレ設置を実現する床板「SATO Slab」は、一度に多くのトイレ設置を可能にすることから、人道的な用途をはじめ様々なニーズに対応します。土台の表面にある突起により、視覚障がいのあるユーザーが利用しやすいことも特長の一つです。また、多種多様な配管に対応する「Universal I-Trap」を、バングラデシュで販売開始しました。SATOの最大市場であるバングラデシュでは、2013年に一つの製品から始まり、生産・販売などサプライチェーンを構築しながら、製品ポートフォリオを拡大させる中で、衛生市場の拡大に貢献しています。

各地域のニーズへの対応やマーケティング・販売体制を強化するため、2023年3月期はインドとケニアに「カスタマー・エクスペリエンス・センター」を開設しました。お客さまへの理解を深めるとともに、問い合わせ情報を蓄積することに貢献しています。

SATO製品一覧(英語・別画面が開きます)>
V-Trapの仕組み 動画 (英語・別画面が開きます)>

SATO事業を通じた地域における人材育成と事業創出

SATO事業では、製品開発のみならず、現地のメーカーやNGOと連携し、現地での生産・販売体制の構築を進めています。また、SATO製品の導入による効果やインパクトを最大化させるため、現地の人材育成にも取り組んでいます。Make(作る)、Sell(売る)、Use(使う)というサイクルを回し続けることで、地域に事業や雇用を生み出し、継続的な衛生環境の改善を可能にしています。こうした取り組みを通じて、持続可能な衛生市場を生み出すことを目指しています。

Make(作る)、Sell (売る)、Use(使う)サイクルのイメージ図

重要な施策として、SATOトイレの設置を担う現地の職人の育成に取り組んでいます。これまでインド、ウガンダ、ナイジェリア、タンザニアなどにおいて、NGOや国際機関と協働で無料研修プログラムを実施し、主に若年層や女性など24,000人以上が参加しました。2023年3月期は、インドで5,500人以上が研修を受講しました。こうした研修は、トイレ設置の技術や収入の向上などにつながっています。また、COVID-19の感染拡大を受け、デジタルプラットフォームの活用も始めました。オンラインで研修を続けられるだけでなく、衛生環境の改善が特に求められる農村や都市に暮らす人びとにも教育コンテンツを届けることができ、地方の職人や販売店などのパートナーの間での需要創出にもつながりました。

ウガンダでの研修の様子

ウガンダでの研修の様子

職人研修プログラム参加者数
24,000人以上

様々な地域における独創的な衛生教育

LIXILは、トイレや手洗い設備などの衛生ソリューションの普及啓発を目指して、各地で様々な活動を行っています。

アフリカ地域で展開している「学校トイレ改善プログラム(STEP)」では、学校のトイレを改修することで、衛生環境に起因する感染症を減らすとともに、家庭や地域社会にも衛生的なトイレの重要性に対する意識が広まるよう取り組んでいます。2023年3月期は、ルワンダ政府との連携のもと地域一帯の学校で実施したほか、日本におけるコーズ・リレーテッド・マーケティング(CRM)プログラムと連動してケニア10校で実施するなど活動を広げました。2023年3月までにアフリカ地域内の43校約72,000人の生徒を対象に実施しました。官民連携を通じてプロジェクトを拡大させ、トイレのあり方を変えるとともに、様々な製品を通じてインクルーシブなトイレを実現することを目指しています。

学校トイレ改善プログラム(STEP)

学校トイレ改善プログラム(STEP)

アフリカでの学校トイレ改善プログラム(STEP)実施校の生徒数
72,000

社会価値の最大化に向けた国内外のパートナーシップ

LIXILの衛生製品や活動のインパクトを最大化させるためには、パートナーシップが不可欠です。様々な国際機関や専門機関、NGO、ビジネスパートナーと連携しながら、地域に合わせた製品開発や現地における生産・販売拠点の構築のほか、能力開発や販売促進活動、意識啓発を通じた需要創出に取り組んでいます。2023年3月期は、ユニセフやUSAIDとのこれまでのパートナーシップに加え、FINISH Mondialとの新たなパートナーシップにより経済的支援を通じて持続的な変化を生み出し、安全な衛生設備へのアクセスを確保する取り組みを開始しました。

国際連合児童基金(ユニセフ)

LIXILとユニセフは、衛生環境の改善を目指したグローバルパートナーシップ「MAKE A SPLASH!」の活動地域を2022年3月期に拡大しました。2019年3月期に取り組みを開始したエチオピア、ケニア、タンザニアでは、これまで290万人の衛生環境の改善に貢献し、これに加えて、世界でも特に人口が多いインド、インドネシア、ナイジェリアも対象となりました。このパートナーシップを通じて、新たな製品開発や需要創出、地域の衛生経済を支援するための資金調達の活用、衛生分野の強化のための政策や規制の支援に取り組んでいきます。

MAKE A SPLASH!のロゴ

ユニセフは特定の企業やブランド、製品やサービスを推奨していません

「MAKE A SPLASH!」を通じて衛生環境が改善された人の数
290万人

インドでは、故障などで使われていないトイレが多くある現状を受けて開設した「トイレクリニック」を通じて、ケニアでは金融サービスを通じて、衛生ソリューションにアクセスできる仕組みを構築するなど、革新的なアプローチで取り組んでいます。その他、2023年3月期に日本で展開された「みんなにキレイをプロジェクト」など、お客さまの製品購入に連動して「MAKE A SPLASH!」に寄付されるコーズ・リレーテッド・マーケティング(CRM)活動も実施しています。

MAKE A SPLASH! >
ステークホルダーエンゲージメント>

米国国際開発庁(USAID)

LIXILと米国国際開発庁(USAID)は、2021年10月に5ヵ年の連携協定「Partnership for Better Living(PBL)」を始動させました。PBLはサブサハラ・アフリカやアジアでSATOトイレや手洗いステーション「SATO Tap」などの製品のサプライチェーンを安定的に確立することで、2026年までに約200万人の衛生環境を改善することを目指します。本協定はLIXILがUSAIDと結ぶ初めての直接的なパートナーシップであり、USAIDから1,000万ドルの助成金が提供されました。

2023年3月期には、SATO事業拡大に向けた機会を探るため、西アフリカでプラスチックの生産・販売環境に関する調査を実施しました。さらに、SATO製品を調達してプログラムを行うNGOや、USAIDの水と衛生(WASH)プロジェクトの責任者、SATO製品を製造するメーカーなどにヒアリングを行い、販売や連携の機会の特定、サプライチェーンの課題への対応、目標の達成に向けた効果的な施策の策定につなげています。

USAIDとの連携について(別画面が開きます)>

国際協力機構(JICA)

LIXILと独立行政法人国際協力機構(JICA)は、途上国の衛生環境の改善や安全な水の確保などに向けた取り組みを、双方の強みを活かし連携して進めています。2021年3月期以降はインドにて、手洗いなど衛生習慣の啓発活動を協働で行っています。また、2023年3月期は、アフリカ5ヵ国の公衆衛生に関わる行政官に向けて、世界の衛生課題に関するオンライン研修をJICAと共同で実施しました。

FINISH Mondial

LIXILとFINISH Mondialは、グローバルな衛生課題の解決に向けて、2023年3月期に連携協力覚書を締結しました。FINISH Mondialは、衛生分野におけるコミュニティや事業者に対する資金支援やトイレ設置などを官民連携で推進する組織で、750万人の衛生環境の改善に貢献しています。本連携を通じて、家庭内の衛生環境改善や衛生ビジネスの拡大に向け、融資などの金融サービスと組み合わせることで、SATOの衛生ソリューションへのアクセス向上に取り組んでいます。

FINISH Mondialとの連携について(別画面が開きます)>

BRAC 、PSIなどのNGO

SATO設置までのバリューチェーンの構築、衛生対策の推進に向けた政府への働きかけや製品開発へのフィードバックなど、バングラデシュではBRAC (Bangladesh Rural Advancement Committee)、ケニアではPSI (Population Services International)といった経験豊富なNGOと協働して取り組みを推進しています。

Toilet Board Coalition

LIXILは、官民一体となり、衛生課題の持続的な解決を目指す世界的規模の団体「Toilet Board Coalition」の一員です。共同設立メンバーとして様々な中心的役割を担っており、2019~2021年には同団体の会長を務めたほか、現在は副会長に加え、「Toilet Board Coalition in Asia」の会長に就任しています。基幹事業であるアクセラレータープログラムに積極的に参加するほか、衛生課題解決に取り組む起業家のメンタリングやアドボカシー活動を行っています。2023年3月期は、新戦略の策定に中心的に取り組みました。2030年までに10億人の生活改善を実現する目標に向け、主に中小企業に向けたメンタリングや投資などの支援を加速させていきます。

Toilet Board Coalition(英語・別画面が開きます)>

官民連携の強化に向けた取り組み

水と衛生分野の課題解決に向けては、世界各地で進む行政による投資および取り組みと、民間企業が持つ専門的な知見や革新的な技術を効果的に組み合わせることで、より大規模なインパクトを実現できます。LIXILは、政府や公共部門などの主要ステークホルダーとの連携を促進し、シナジーの最大化を図ることを目指して、SATO事業部とは別に、2023年3月期に「LIXIL Public Partners(LPP)」を設立しました。

LIXIL Public Partners(LPP)

LPPは現在、基本的な衛生設備にアクセスできない人が200万人に上るとされる米国で、主に低所得地域を中心に、行政組織と連携しながら実証プロジェクトを拡大しています。8割の家庭で公共下水道が整っていないアラバマ州の農村地域では、州政府や公共機関との連携や助成金の活用を通じて、LIXILの革新的なソリューションの開発・提供により100世帯の衛生環境を改善しました。LPPは今後1~2年間で、米国での実証プロジェクトを通じて、水と衛生の分野における官民連携モデルや戦略を模索し、製品やサービスの適切なポートフォリオを打ち出していく予定です。早急な対処が必要な水と衛生の分野における取り組みを、LPPを通じてさらに加速させていきます。

アラバマのプロジェクトの様子

アラバマのプロジェクトの様子

LPPについて >
アラバマのプロジェクトについて(別画面が開きます)>

日本のお客さまとともに

LIXILでは、日本で衛生問題への理解を広め、お客さまとともに開発途上国の衛生環境の改善に貢献する取り組みを行っています。

2020年3月期には「みんなにトイレをプロジェクト」において、一体型シャワートイレの売り上げの一部を、ユニセフとのグローバルパートナーシップ「MAKE A SPLASH!」に寄付しました。寄付された約2,600万円は、安全で衛生的なトイレの設置に必要なインフラ整備や衛生教育などに使われています。また、2023年3月期は、若手従業員の主導により「みんなにキレイをプロジェクト」を開始しました。一体型シャワートイレやタッチレス水栓などの対象製品を一台購入すると「MAKE A SPLASH!」を通じて1ドルが寄付される仕組みによる寄付と、LIXILからの寄付額を合わせて、総額約2,380万円が寄付されました。寄付金は、主にケニアの学校への衛生的なトイレの設置や衛生教育など、衛生環境の改善を目指す取り組みに活用されています。

また、リクシルオーナーズクラブでも、LIXIL製品を購入されたお客さまが会員登録をすると、1人あたり10円を「MAKE A SPLASH!」に寄付する取り組みを2020年より毎年数ヵ月間実施し、これまでに合計540万円以上を寄付しました。

その他、日本国内のお客さまやビジネスパートナー、次世代の子どもたちとともにSDGs達成への貢献に取り組む活動「LIXIL × SDGs NEXT STAGE」では、ウェブサイトやYouTube番組を通じて衛生課題に関する情報発信を行っています。2023年3月期は公式Instagramにおいて、堀田茜さんがナビゲーターを務めるインスタライブを行い、世界の衛生課題を考えるコンテンツを配信しました。

MAKE A SPLASH! >
みんなにキレイをプロジェクト(別画面が開きます) >
リクシルオーナーズクラブ >
LIXIL × SDGs NEXT STAGE >

外部からの表彰

LIXILは、「第2回ジャパンSDGsアワード SDGs推進副本部長(外務大臣)賞」を2018年12月に受賞しました。LIXILの衛生課題に対する取り組みは、SATO製品の開発やバリューチェーン全体を通じた課題解決、NGOや国際機関との協働によるアドボカシー活動などが評価され、様々な賞を受賞しています。また近年は、革新的な新製品「SATO Tap」の開発が評価されています。

  • 第 2 回ジャパンSDGsアワード SDGs推進副本部長(外務大臣)賞
  • TIME誌 THE BEST INVENTIONS of 2020 (SATO Tap)
  • Fast Company誌 World Changing Ideas パンデミック対応部門および開発途上国におけるテクノロジー部門でファイナリストに選定 (SATO Tap)
  • ピープルズ・チョイス・アワード2022(ウガンダ):Best sanitary innovation賞(SATO Pan)

これからのトイレを考える

LIXILは、すべての人びとが安全な衛生設備へのアクセスを確保されるべきだと考えています。技術、デザイン、製品開発に関する専門家チームを結成し、様々な活動を通じて、実験的な新たな形のトイレの開発をリードしています。

LIXILは、家庭向け「リインベンテッド・トイレット」の開発に向け、2018年にビル&メリンダ・ゲイツ財団とパートナーシップを締結しました。この取り組みの次の段階として、ジョージア工科大学とともにG2RTプロジェクトを進めています。これは下水処理システムを必要とせずに、その場で排泄物を安全に処理するオフグリッド仕様のトイレです。現在、パートナーシップを通じて製作された第1号基の実証実験を行っています。

SATO事業では、既存のSATO製品ポートフォリオをさらに拡充するため、汲み取り式トイレ向けの安価な処理システムの活用について検討しています。農村地域や都市部の周辺地域における安全な衛生設備の実現に向け、さらに充実したソリューションの提供を目指しています。

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