トイレの「再発明」とは?

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“最新のトイレ”と聞くと、洗練されたデザイン、優れた洗浄機能や汚れが付きにくい技術、最近ではアプリとの連携機能などが思い浮かぶかもしれません。トイレの機能は目覚ましい進化を遂げる一方で、「用を足した後に水で流す」という、水洗トイレの基本的な仕組みは、何世紀にもわたって変わっていません。しかし、こうしたこれまでの常識に捉われない、まったく新しいアプローチで、トイレの「再発明」を目指す取り組みが進んでいます。

「トイレの話の素晴らしいところは、誰でも共感できるということなんです。トイレはみんなが使うものですからね。その半面で、非常に深刻な側面を持ったテーマでもあります」とYee教授は言います。

世界が直面する衛生危機

米ジョージア工科大学 Shannon Yee 教授

米ジョージア工科大学 Shannon Yee 教授

「『世界の半分はトイレを必要としていて、残りの半分はもっと良いトイレを求めている』とよく言われます。言い換えれば、世界の衛生インフラは完璧な状態とはほど遠い、ということだと私は思います」とYee教授は指摘します。

トイレの再発明

このG2RTの開発は、2011年に始まったビル&メリンダ・ゲイツ財団の研究支援プログラム、「トイレ再発明チャレンジ(Reinvent the Toilet Challenge)」が出発点になっています。現在の一般的なトイレと大きく違うのは、G2RTは排泄物を処理するための下水道や浄化槽などのインフラを必要とせず、電源があれば独立して機能する点です。

つまりG2RTは、排泄物を直接その場で処理することができる機能を有しているのです。排泄物をまず、固形部分と液体部分に分離します。固形部分は高熱、高圧で処理することで病原菌を死滅させ、ホッケーで使われるパックのような大きさの乾燥した円板を排出するしくみで、これは肥料としても利用できます。また、「超臨界水酸化」と呼ばれる技術を使って処理することで、固形部分は清潔な水と灰に分解することもできます。液体部分は衛生的に処理され、こちらも洗浄水として再利用されます。

コンセプトから製品化へ

LIXILはこのプロジェクトの初期段階から製品化に向けたアドバイザー、便器部分のフロントエンド開発者としてジョージア工科大学と連携し、製品開発や製造に関与しています。これまでにG2RTのプロトタイプ(試作品)24台を使い、米国と欧州の研究所において実証研究を行い、インドや南アフリカの一般家庭にも設置して実証実験を実施しました。

「もしこのプロジェクトが学術論文として本棚にしまわれるだけなら、そこまで興味はありませんでした」。 ジョージア工科大学で、G2RTのプロジェクトに参画してきたLisa Bianchi-Fossati氏は振り返ります。「しかし、共に開発を続ける中で、LIXILは実用化への強い意志を持って取り組んでおり、同じビジョンや価値観を持って、共にプロジェクトを推進していくことができると確信するようになりました」

公共の施設や災害後の緊急対応にも活用

LIXIL 常務役員 Erin McCusker

LIXIL 常務役員 Erin McCusker

LIXILの次のステップは、一般家庭と公共施設の両方で利用できるように、製品化に向けて技術改良を続けていくことです。「安全な衛生環境にアクセスできない人たちが数多くいますが、この技術によって、トイレのある暮らしを実現したいと考えています」。LIXILでSATO事業部およびLIXIL Public Partnersを率いる常務役員 Erin McCuskerは述べています。

「この技術は、家庭だけでなく、公共の場所での利用や災害後の緊急対応など、潜在的なものも含めて多くの需要があると考えています。まずは、顕在化している緊急度の高いニーズに対応しながら、製品を市場に送り出すことに注力していきます」

既存の仕組みを変革する

G2RTの製品化イメージ

G2RTの製品化イメージ

また、技術やコストだけではなく、国や地域ごとに異なる法規制にどう対応するかも、実用化にあたっての課題となります。「現時点では、技術改良とコストダウンを実現したG2RTが手に入ったとしても、すぐに設置できる場所はほとんどありません」とMcCuskerは言います。

「排泄物をその場で処理して再利用するという考え方はまだ非常に新しく、現行規制に照らして受け入れられるものかどうか。その対応を含め、まだやるべきことは多く残っています」

インパクトを生むパートナーシップ

さらに、G2RTのような革新的なアイデアを推進するためにパートナーシップを構築することで、世界中のより多くの人々にアプローチできるようになります。また、衛星環境の向上に向けては、SATOのような既存のソリューションへの投資を継続するとともに、ユニセフ、USAID(米国国際開発庁)、Toilet Board Coalitionをはじめとするパートナーと連携し、現地におけるエコシステムの構築に取り組んでいくことも重要です。

「政府や民間セクター、コミュニティなど、あらゆるステークホルダーと連携しながら、現在直面する衛生課題に対応し、将来を見据えたソリューションやビジネスモデルを開発するパートナーとして、LIXILの存在感を高めていきたいと思います」とMcCuskerは述べています。

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