LIXILは、世界中の誰もが描く住まいの夢を実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しています。
水まわり製品のリーディングカンパニーとして、LIXILは製品の設計・開発の専門性を活かし、2025年までに1億人の衛生環境の改善を通じて生活の質の向上に貢献するという目標を掲げています。野心的な目標を達成するため、SATOの衛生ソリューションの提供だけにとどまらず、多様なステークホルダーと連携し、LIXILが持つ民間の専門知識や革新的な技術を活用することで、世界各国で持続可能なインパクト(良い影響)を生み出しています。
SATO事業では、様々な顧客のニーズに対応するために製品ポートフォリオを拡充するとともに、持続可能なソーシャルビジネスの実現に取り組んでいます。販売網を遠隔地に拡大しながら、多様な製品ポートフォリオによりあらゆる地域や人びとの幅広いニーズに対応し、生活の質の向上と明るい未来に貢献しています。
SATOブランド製品は、現在アジア・アフリカ地域で生産され、年間出荷台数は5年連続で100万台を突破しました。これまでに約860万台を45ヵ国に出荷し、約6,800万人の衛生環境改善に貢献しています(2024年3月31日時点)。2024年3月期は、新たにフィリピンとインドネシアでSATO事業を立ち上げました。これらの国々では、新しく取引を開始したメーカーで製品の現地生産を行っています。こうした現地での生産・事業体制は地域経済を支えることにつながっています。新市場への継続的な参入の一環として、LIXILは米国国際開発庁(USAID)との連携協定「Partnership for Better Living」を通じて、マダガスカルにも事業を拡大しています。
さらに、インドとアフリカにあるカスタマー・エクスペリエンス・センターを通じて、お客様の声を収集・蓄積し、顧客理解を深めることで、各地域のニーズに対応し、マーケティングや販売体制を強化しています。
開発途上国向け簡易式トイレシステム「SATO」は、安全で衛生的なトイレが不足する農村や都市部周辺での利用を想定した、シンプルな構造で設置しやすい低価格なトイレシステムです。1L以下の少ない水で洗浄できる設計で、排泄物を流すとカウンターウエイト式の弁が開き汚物が流れます。その後、弁が閉まることで、ハエなどの虫による病原菌の媒介や悪臭を低減する仕組みになっています。SATOブランドの製品は、軽量かつ耐久性のあるプラスチック素材でつくられており、少ない労力で持ち運びや設置が可能であるため、輸送手段が限られている地方農村部で大いに役立っています。また、LIXILは、サステナビリティとイノベーションの取り組みとして、環境負荷を削減するため、原材料である化石燃料由来のプラスチックの代替品や、再生プラスチックの使用の可能性についても検討しています。
初代モデルのSATO Panは、バングラデシュの地域社会のニーズを基に、簡易式トイレの設置や既存のトイレのアップグレードに活用できる低価格なソリューションとして開発され、2013年にSATOブランドの最初の市場として同国で生産・販売が開始されました。
SATO Stoolは、子どもや高齢者、妊娠中の方、障がいのある方も安全で快適に利用できる着座式のトイレです。
※図の製品は、SATO Panです
汲み取り式トイレの便器とピット(便槽)をつなぐ独自のコネクションシステムであるI-TrapとV-Trapは、短時間の施工を可能とし、より良い衛生環境を実現します。
バングラデシュでは、多種多様な配管に対応するUniversal I-Trapを展開しています。またインドでは、ピットが2つある2ピットシステムのトイレが政府により推奨されていますが、排泄物が詰まりやすい、施工に時間がかかるといった課題がありました。V-Trapは、従来の配管方式とは異なり、独自の弁を備えた調節可能なV字型の配管によって、2ピットシステムのトイレ施工における課題を解決しました。 V-TrapとSATOトイレシステムを組み合わせることで、排泄物が詰まるリスクを軽減し、汚物を流すのに必要な水の量を従来のトイレに比べて約8割削減します。SATO独自の2ピットシステムトイレは、低価格で効果的なソリューションとして、インドやその他の地域における安全な衛生環境の実現に貢献しています。LIXILでは現在、SATO Pan、SATO Stool、SATO Tapの販売拠点があるアフリカで、I-TrapとV-Trapのコネクションシステムの市場を拡大しています。
V-Trapを施工する様子
SATO Slabは、専門スキルがなくても短時間でトイレを設置できる床板です。特に自然災害の発生時や紛争地域における避難先となる仮設住宅や難民キャンプなど、短期間に大規模な衛生ソリューションが必要となる状況に適しています。また、視覚障がいのあるユーザーが利用しやすいよう表面に突起を施すなど、様々な状況下での使用を想定した誰にでも使いやすい設計となっています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止策として開発されたSATO Tapは、家庭や地域コミュニティ向け手洗いソリューションです。水が容易に利用できない、手洗い設備がないといった世界各地のニーズに応えられるよう、シンプルな材料や生産方法、使い勝手、手頃な価格設定など、エンドユーザーの視点を重視しながら開発が進められました。その結果、低価格を実現し、水道が利用できない人びとに広く使用される製品となりました。
プラスチック製の本体とノズルで構成されるSATO Tapは、多様な形状や大きさのペットボトルに対応した設計になっており、重力を利用して、手洗いに必要な最小限の水量を無駄なく安定して放出します。1回の手洗いに必要な水量はわずか100mlで、通常の水栓に比べて90%の節水を実現します。フィリピンでは、ドイツ国際協力機構(GIZ)によって水の効率的な使用が非常に重要な学校環境において手洗い用の水使用量の調査が行われ、SATO Tapの高い水利用効率が確認されました。また、プラスチック製の本体とノズルは容易に生産できるため、低コスト・低価格を実現しています。一般に入手しやすいペットボトルをSATO Tapで再利用することで、使い捨てプラスチックの削減にも貢献します。
ペットボトルを活用した手洗いステーション「SATO Tap」
ユニセフなどとのパートナーシップを通じて、これまでアフリカ、東アジア・南アジアの計12ヵ国に50万台を寄贈しています。また、インドで生産・販売体制を構築したほか、タンザニアとナイジェリアでは同製品の生産・販売を行い、アフリカ諸国への輸出に取り組んでいます。
LIXILは、SATO Tapの開発と広範囲な地域への提供を通じて、また手洗いの重要性を伝える意識啓発などにも取り組むことで、世界中の人びとの生活の質向上と明るい未来に貢献していきます。
フィリピンの学校における手洗い用の水使用量に関する調査で使われたSATO Tap ©GIZ, Fit for School
LIXIL Public Partners(LPP)は、LIXIL初の公共セクターとの連携プラットフォームとして、水・衛生分野におけるシナジーを追求し、協働事業を拡大するために設立されました。世界各国の政府が水や衛生設備へのアクセスなどの社会・環境課題への取り組みを強化する中、LPPを通じて官民のシナジーを活用することで、LIXILがもたらすインパクトを拡大することができます。SATO事業など既存の取り組みをベースに、地方自治体やNGO、学術機関と協力し、水や衛生設備へのアクセスを改善する革新的な製品やソリューションを提供しています。
アラバマのプロジェクトの様子
LPPは現在、安全な水や適切なトイレ、浄水設備にアクセスできない人が220万人に上るとされる米国で、主に低所得地域を中心に、行政組織と連携しながら実証プロジェクトを拡大しています。8割の家庭で公共下水道が整っていないアラバマ州の農村地域では、州政府や公共機関との連携や助成金の活用を通じて、LPPの革新的なソリューションの開発・提供により100世帯の衛生環境を改善しました。
LPPは今後、米国での実証プロジェクトを通じて、官民連携モデルおよび戦略を精緻化し、取り組みを拡大していきます。同様のニーズを抱える地域における水と衛生の分野の課題解決に資する製品・サービスのポートフォリオを打ち出していくことを目指し、向こう数年にわたり、早急な対処が必要な領域における取り組みを、LPPを通じてさらに加速させていきます。