LIXILの衛生陶器の新素材「アクアセラミック」
―トイレの汚れは過去のものに

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更新:2016年10月21日

100年、という長い期間を想像してみてください。今後100年の間に、私たちは予期せぬ出来事に遭遇する一方で、1世紀の時を経ても変わらないものも、やはり存在します。

例えば、LIXILのタンクレストイレ、「SATIS」の最新モデルには、「100年クリーン」を謳った新素材が採用されています。100年経っても汚れないトイレ、というのは大げさに聞こえるかもしれませんが、LIXILは実に約25年にわたる研究を経て、水アカや汚れの付着を防ぐ新素材、「アクアセラミック」の開発に成功したのです。

「アクアセラミック」は、トイレの汚れの主な原因である「表面のキズ」、「細菌の繁殖」、「汚物の付着」、「水アカの固着」の4種類すべてに対応する世界初の技術で、2016年3月に発表されたタンクレストイレ「SATIS」の最新モデルに初搭載され、今後、さらに搭載モデルを拡充していく予定です。

汚れに強い次世代の衛生陶器の開発に注力してきたLIXILでは、キズに強い素材の開発や世界初の抗菌技術「キラミック」など、トイレの汚れの原因となる「キズ」と「細菌の繁殖」について、高い防汚性能を発揮する製品を開発し、業界をリードしてきました。

しかしながら、汚物による汚れと水アカの汚れの両方を同時に防ぐ技術の開発は、長年の課題となっていました。これまで、汚れを防ぐためには撥水性が重視されてきましたが、撥水性を高めることで水アカを防ぐことができるものの、汚物汚れに対する効果は低くなります。逆に表面を親水性にすると、汚物汚れは落ちやすくなるものの、水アカが発生しやすくなってしまうという難題があり、試行錯誤を続けてきたのです。

株式会社LIXIL LIXIL R&D本部マテリアルサイエンス研究所の奥村承士は、衛生陶器に関する長年の基礎研究を基に、「便器を素材から見直し、汚れそのものを陶器に付着させないようにできないか」という原点に戻って、研究開発に取り組んできました。

試行錯誤を重ねて商品化に成功した「アクアセラミック」の表面は、親水性が非常に高く、陶器表面に付着した汚れの下に水が入り込み、汚れを浮かび上がらせることで、洗い流すことができます。汚れが陶器に付着してしまう最大の原因は、汚れの中に含まれる油分ですが、「アクアセラミック」では、「汚れと陶器との間に水をするりと入り込ませ、水が本来持つ"油となじまない性質"を活用して、その油分を含む汚れを浮かび上がらせる」ことで、少量の洗浄水でも汚物を洗い流すことが可能となりました。

4種類の汚れの原因の中でもっともやっかいな水アカの固着は、陶器表面の水酸基(-OH)と洗浄水に含まれるシリカの化学結合によって生じます。「アクアセラミック」では、陶器表面に水酸基が露出しない特殊な構造となっているため、水アカが固着せず、表面をなめらかなまま保つことができます。このように、トイレそのものの素材を見直すことで、これまで課題となっていた汚物の汚れを防ぐだけでなく、水アカの抑制という課題にも対応しています。

世界中から収集されたマテリアル情報を活かして製品開発や用途開発などのコンサルティングを行うマテリアル・コネクション(Material ConneXion)社で研究チームを率いるアンドリュー・デント博士は、「アクアセラミック」に関して次のようにコメントしています。「私はふだん革命という言葉はなるべく使わないようにしていますが、『アクアセラミック』はまさに衛生陶器における革命と言えるでしょう。この業界で約15年の経験がありますが、驚くような素材技術と出会うのは本当にまれです。家の中で使う製品に関しては清掃性が大きな課題ですが、これを解決した点に革新性を感じました。アクアセラミックを搭載した製品では、少量の水で汚れが浮かび上がって洗い流すことができ、掃除が驚くほど簡単になります。」

デント博士によると、汚れは衛生陶器メーカーにとっての最大の課題であり、大きく分けて短期的に付着する汚れと長期的に付着する汚れの2つに対応する必要があります。 「2種類の汚れの一つは日常的に発生する、研磨剤で比較的容易に落とすことができる汚れです。もう一つは、水アカから発生する長期的に付着する汚れで、これはどんな洗剤を使っても落とすことができません。」

しかしながら、「アクアセラミック」はこれら2つの問題を見事解決しました。同素材でできたプレートに油性ペンを塗り、その上に水滴を2、3滴たらすだけで、水はインクの下に入り込み、インクを浮き上がらせます。「『アクアセラミック』の親水性は非常に高く、表面が水に触れると文字通り汚れが持ち上がるのです。このような特長により、水アカが陶器表面に付着することがなくなり、水アカはもはや過去の遺物ともいえます。」

防汚性能を100年維持できるよう、LIXILは汚物・水アカに対して防汚機能の役割を果たす特殊な物質を、釉薬に分子レベルで一体化させる新技術を開発しました。

強度実験により、「アクアセラミック」を採用したトイレは100年以上摩耗せず、日常の簡単なお手入れだけで、新品の輝きが100年以上続くことが確認されています。

「研磨剤が不要となり、中性洗剤を洗うだけで100年間汚れが表面に付着しないということは、より刺激の少ない洗剤の使用を促し、洗剤の量や掃除に使う水の量の低減にもつながり、環境にもやさしい」という点にも、デント博士は着目しています。

LIXILは、トイレだけでなく、洗面化粧台やトイレの手洗いなど、陶器製の水まわり製品にも「アクアセラミック」の導入を進めていきます。また、欧州市場ではグローエのブランドを展開していますが、2016年9月より、「アクアセラミック」を搭載した欧州仕様のシャワートイレ「Sensia Arena」の提供を開始しました。

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