業界全体の動向

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日本の業界動向

新築住宅市場の推移

日本の新設住宅着工総数は、1996年度の163万戸をピークに、過去約20年間減少傾向が続いています。長期的には日本の人口自体が縮小すると見られることから、着工数は今後も緩やかに低減を続け、2016年度以降は80万戸前後になると想定されます。2014年度は、2014年4月に実施された消費税増税前の駆け込み需要の反動減があったことから持家を中心に住宅投資が冷え込んだ結果、前年度比10.8%減の約88.0万戸となりました。少子高齢化や単身世帯の増加といった人口動態の変化や、消費者のライフスタイルの多様化を反映し、新設住宅の中でも賃貸向け住宅については当面底堅い動きが予想されます。

住宅ストックの現状とリフォーム市場の規模

住宅ストック数がすでに総世帯数の15%以上を上回る中、居住者のいない住宅は2013年時点で820万戸に迫っており、今後も増加すると見られます。しかし、日本の中古不動産の流通市場は欧米先進諸国と比べて規模が小さく、全住宅流通量に占める既存住宅の流通シェアは2013年時点で約14.7%であり、近年ではシェアは大きくなりつつあるものの、欧米諸国と比べると6分の1程度です。政府は、2000年代半ば以降、ストックを重視した住宅政策に舵を切り、中古住宅・リフォームの市場規模を2020年度までに20兆円に拡大する目標を掲げています。この目標に向け、世代を超えて利用が可能な良質な住宅ストックの増加や中古住宅流通及びリフォーム市場の整備が図られています。

ビル市場の推移

2014年度の事務所、店舗、工場、住宅等、建築分野における建設大手50社の受注動向の総計は、前年度比3.8%増となりました。製造業をはじめとした民間分野の受注が活発であったほか、公共機関からの受注も拡大したことから、4年連続での増加となりました。企業業績の改善と東京都心部の大規模オフィスビルでの空室率低下を受け、不動産デベロッパー各社は開発計画を進めており、東京23区域内では2015年以降5年程度にわたり、1986年から2014年までの平均を上回る面積のオフィスが供給される見込みです*1

*1 森ビル株式会社「東京23区の大規模オフィスビル市場動向調査<速報版>」2015年4月22日

海外の業界動向

米国の住宅市場

米国では、雇用・所得環境の改善を背景に住宅需要が緩やかに回復しています。天候による一時的な鈍化は見られるものの、新築住宅着工件数が上昇傾向にあるほか、2015年5月の中古住宅販売件数が2009年11月の水準に迫るなど、住宅市況は総じて堅調に推移しています。連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを実施すれば、住宅ローン金利も上昇すると想定されますが、雇用や所得の拡大、消費者マインドの改善により、住宅市場は今後も回復基調を維持すると予想されます。また、実質GDPに占める住宅投資の比率は、金融危機直後の落ち込みからやや持ち直しているものの依然低水準にあり、住宅投資の拡大余地は大きいと見込んでいます。

欧州の不動産市場

欧州では、各国が債務危機の沈静化へ向け構造改革や財政再建を進め、足元ではギリシャ債務問題の不透明感が高まるものの、ユーロ圏の実質GDPは緩やかに回復しつつあります。また、欧州中央銀行(ECB)の主導による金融緩和が、不動産市場への資金流入につながっているほか、米国や新興国、中東など海外からの不動産投資も活発化しています。この結果、商用不動産取引額が拡大し、ロンドン・パリなど欧州主要都市でのオフィス空室率も低下傾向を示しています。特にロンドンにおいては、幅広い業種の企業のテナント需要拡大を受け、2014年以来複数の大規模オフィスビル開発が進んでおり、オフィス不動産市況は回復基調にあります。

アジアの不動産市場

東南アジア諸国連合(ASEAN)*2 地域は、2012年時点で約6.1億人に達した人口と旺盛な個人消費意欲、2015年末に予定されている「ASEAN経済共同体」の発足を追い風に、GDPの成長が続くと予想されます。人口増加率・生産年齢人口比率の高さや、同地域における活発な企業活動から、中期的に住宅及びビル・商業施設市場が成長することが見込まれます。
 一方中国では、GDPの成長率の減速や政府による引き締め政策によって、2014年度前半には不動産市場がマイナス成長となりました。市況は依然低迷しているものの、2014年後半以降は緩やかな回復傾向を維持しており、底を打ったと見られます。

*2 ASEAN加盟国:ベトナム、タイ、シンガポール、フィリピン、ミャンマー、マレーシア、ラオス、インドネシア、カンボジア、ブルネイ


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